孤独。多いにけっこう。身を守るためにもっとも確実な保険は、孤独、だ。

 コーチを頼る気持ちは分からないではないが、どれほど愛を感じ、愛ゆえの行動があったとしても、感情で殴る相手なら、私は距離を持つべきだと感じる。

 それでメダルが取れなくなったら?
 それは、それで生活ができなくなったら? とDV夫を手放さない主婦のセリフだ。

 最低限、殴る人間、過去殴った人間、を、遠ざける。メダルも生活もその次だ。殴られて強くなったのではない。自分が頑張ったから強くなれたのだ。強くなれなかったらどうしよう、生活できなくなったらどうしよう、は、じゃあどうすれば強くなれるか、どうすれば生活力が身に付くか、に、視点を変えるべきで、あの男性じゃなきゃ私はダメなんだ、と、思わせる行為として「殴る&抱きしめる」がある、と知っておいたほうがいい。

 しかし、昭和の時代に権力者が女性に使った手法がいまだに使われ、昭和の女が辛抱したようにまだ18歳の女子がそれを容認するとは。

だから私はセリーナが好きだ

 自己評価の低さなしには暴力の受容はない。大坂なおみが泣いた。日本国中が大坂なおみを好きになった。この国は、審判に抗議するようなむき出しの敵意を見せるプレーヤーよりも、勝利したのに泣く女性を拍手喝采するのだ。こういう国では殴られても、「私に謝れ!」という女性は育たない。

 「暴力はありましたが、私には彼が必要です」と言わしめる深刻さは、宮川選手のみならず、そういう文化を作っている我々の問題でもある。大坂なおみ選手は私も好きだが、もっと好きなのは審判という権力者に対して「私に謝れ!」と怒鳴ったセリーナ・ウィリアムズ選手だ。理由は「性差別的だと感じた」のだそうだ。カッコいいじゃないか。

 自分を殴る男を必要とし、守ろうとする日本女性を高く評価する向きはすればいい。不憫と思うなら思えばいい。抗議し、ラケットを折るほど暴れ、でも泣く大坂なおみ選手を抱きしめるセリーナに、私は惚れる。

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