また、金品とまではいかないまでも、高額なプレゼントが出演前に飛び交うのも知っている。想像してみてほしい。8万円もする高級保湿クリームをくれたタレントに、「あんたねぇ!」とは言えん。だって、人間だもの。

 私が共演者を怒らせる発言をしていたら、友達のタレントが私に助言した。

 「付け届けをしなさい」と。「嫌だ」と言ったら、結果、番組を降ろされたこともある。何が言いたいかというと、芸能界は付け届けだらけの慣習で成り立ち、スポーツ界で既得権益を持つリーダーを叩いているが、芸能界だって既得権益だらけなのだ。

 スポーツ界も芸能界も長期にわたるリーダーと、その人物がリーダーにたる人格者かどうかは、まったく別問題だ。もっと言うと、人格者じゃないからいつまでも既得権に固執して権力の座に居続けるタレントなんか、書いていいなら何人でも書ける。

面白くなくても、テレビには出続けられる

 カネが動くと不正。権力にしがみつき既得権益者になり利権をむさぼると不正。
 では聞くが、そのコメンテーターたちが属する芸能界は、カネや利権が動いていないと言えるのか。「あなた、スポーツ界を叩けるほど清廉なんですか」と唖然とする。

 そんなタレントたちがスポーツ界のリーダーたちの難点を正義側として批判し、その背後の金銭授与を嘆く。まったくもって、よく言うよ、というのが私の本音だ。

 芸能界にだって、日本大学の内田正人元監督みたいなタイプはいるし、アマチュアボクシングの山根明元会長みたいな強面のタイプもいる。個々の楽屋には、山根明氏の控室のような忖度お菓子が並び、私のような芸能界末端にひっそり生きているタレントが覗ける程度の視野からの付け届けどころではない、もっと桁違いの権力構造があるはずだ。

 「このタレントさん、ずーっとテレビに出てるわねー」という場合には、その背後に何かがある。人気や面白さや魅力など、分かりやすい技術がなく、なぜか、ずーっと、あまり面白いとも思わないタレントが出続けていると、その人をそこに定着させる、永久会長ではないが、永久タレント、というのが出来上がる。

 もちろん、面白くてファンがいてずーっとテレビに出続けている人は別だ。

 強くないのに八段になるために動くお金があるように、うまくないのに免許をもらえる伝統芸能があるように、面白くないのに既得権を得る芸能界というのがある。

次ページ 付け届けは結局は罪なものだ