とりあえず、私は朝を卵料理とカフェオレだけにしてみたが、なんとも偏った食事に思えてならない。パンもとらず、野菜もとらず、で、本当に大丈夫なのか。
そのまま、ランチは野菜炒め、夜はステーキと食し、夜を迎えた。
やはり足がつって眠れない。十秒に一回の痙攣も起こる。
エイッと起き上がり、かっぱえびせんと、アイスモナカを食べてやった。
すると痙攣は落ち着き、眠ることができた。
で、また叱られた。
野菜売り場にとうもろこしが並ぶ季節になったので、これは大丈夫かと尋ねて、さらに叱られた。
「とうもろこしも、じゃがいもも、バナナもダメ。糖質の塊です。いったいなんで、とうもろこしなんですか」
「野菜売り場で売っているものは、野菜じゃないんですか」
「どの野菜にどれほど糖質が含まれているかインターネットで調べられるから、ちゃんと勉強して食事してください」
「そういう勉強は面倒なんです。何がよくて、何がダメかを口頭で教えてくれませんか」
「あさり、しじみ」
「苦手です。砂出しも面倒」
「アボカド」
「ダメ。買った事ない。エイヤッて包丁入れるのもしんどい」
「食に努力しないと、これからの時代は健康に生きていけないのです」
いやはや、ず~っと叱られている。
じっと黙って…
翌日、医療学会の仕事があり、そこで、脳血管の教授たちが4人並ぶ席に私も加わることになった。せっかくなので、ここのところ叱られ続けている問題について聞いてみることにした。
「今流行りの糖質制限ですが、皆さんはどうお考えですか」
全員、じっと黙った。やがて、一人がこう口を開いた。
「どんどん痩せます。そして、性格が攻撃的になった人を僕は見ています」
「ケトン体というのが増えるのだと聞きましたが」
「ケトン体が増えると、それはそれで、危険なんです」
「…」
どうも脳の専門家たちは懐疑的な様子であった。
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