8)「ストロングハート」か?

 この表現もよく耳にするが、違うのではないか。批判を批判として受け、それに向き合い、それでもなお譲らないなら、ストロングだ。が、それとは違う。

 「猶予がほしい。でないと選挙だ」といった懇願と脅迫をセットにできることが、それを物語る。

 世間の怒りや不快感が無視できないレベルになったのを受け、議員たちは質疑をしていた。世間の怒りをバックボーンに、その代替要員として議員たちは怒りの姿勢を示した。もはや何かを“交渉”できる状況になく、そう自らを追い詰めたのは自分自身のこれまでの言葉。それがわからないからできる“交渉”だ。「いや、当然わかったうえでやっている」ということだとすれば、それはそれでまずかろう。

 海外のパレードの映像が印象的だった。おそらく世界的にそう有名でもない彼が上機嫌でオープンカーで手を振っている。路上の人たちは「誰?」と怪訝な顔で彼を見つめている。その怪訝な人たちに彼は、笑顔で手が振れる。

 人々が怒りをあらわにしている中、「ご心配をおかけし…」という言葉を使える。周りが自分のことをどう思っているかを受信するセンサーが故障しているのか。

 例えば「君が好き」という相手に、「私はあなたを好きではない」という態度を示しても通じず、やがて「嫌いだ」と宣告しても通じない。どうやっても通じない。このタイプだろうか。

 振られた事実を受け入れることができず、被害感情だけを募らせる。辞職ではなく解散を選択するのでは?と懸念した人が多かったのは、彼のこうした傾向を感じてのことではないか。

「知識」をどう生かすのか

 一連の騒動の中で我々は「ああ、こういう態度を取ると、みんなの怒りを買うのだな」というケーススタディーをかなり得た。

 しかし、そうした行為で周囲をイライラさせるのは彼だけではない。彼は、実はそこかしこにいる「鈍く幼稚な大人」の一人だ。

 「一生懸命」という言葉を、一生懸命に強く発音すると、一生懸命に映る。何ともシンプルな技法にうっかり乗ったのは我々だ。言葉を弄する人に乗った自省も必要かと思う。

 次こそは、いっそう目を凝らし、耳を傾けなければいけない。世界的に見れば国家クラスの予算を持つ強大な権限を、「あ、この人、知ってる」レベルで決めては断じていけない。

 そもそも、疑わしい点があれだけあって、違法な点は一つもないと言うのは、つまり、適法違法の境目を熟知したうえで、巧妙にそれを避けなければ難しかろう。そうだとすれば「うっかり」より、よほど始末が悪い。

 「法に触れなければ、何をやってもいいんですか?」。子供たちにそう聞かれて、答えに窮する人は勘弁だ。

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