初対面の時、その駄洒落男性は、いきなり、ポケットに手をつっこみ、こう言ったそうだ。
「あれ?こんなところに、折り紙が…」
そして、やにわにその紙で女性の前で手品を始めたという。
女性の感想は、「遙さんは、いい人だって言うけど、フツーのおやじだったわよ」
手品を始められた女性は、その役割として「すっごーい」と言わざるを得ない構図の中で、大人の反応をしてあげたそうだ。その面倒臭さが、「フツーのおやじ」という表現になった。かなり手加減した表現であることがうかがえる。
つまりは、駄洒落好きで手品好きという、二つもの症状が備わっている深刻な"いい人"なのだった。
女性たちに目の前で「キャー」と言われたい、その感情が職場でも銀座でも同じステージのように実現できてしまう。
女性の「キャー」には、嘘が多い、と、教えてあげても信用しない。
目の前で若い女性に「嫌いです」と教えてもらっても、信用したくない。
そこまで執着するほど、駄洒落を手放したくない。その頑なさの裏にあるものは何か。やはり私には、自信のなさしか思い浮かばないのだ。
とりあえず連発禁止で
女性が本音を言ったら、おそらく、企業も社会も夫婦も成り立たなくなるのではないか。「生まれて初めて言われた」という男性は、つまりは妻にも言われたことがないということだ。私にはかなり深刻だと思えてならない。
「たかが駄洒落じゃないか。好きに言わせてくれよ」。もちろん、取り締まる法律もないし、表現の自由は侵されてはならない。あなたには駄洒落を行使する権利がある。しかし、それがあなたにとってプラスなのかは冷静に考えた方がよいですよと、やるならプロはだしの技が欲しいですねと、まことに余計なお世話ながら申し上げておく。
私はそれが自分の役割だと思って、職場で駄洒落を連発されても表情を一ミリも変えないが、世の多くの女性たちは面と向かって心情を吐露することが難しいと考えると、ここは直接、重症患者の方々に目を覚ましていただくしかないのかもしれない。
あなた、嫌われてますよ。

『私はこうしてストーカーに殺されずにすんだ』