権力者には下々の人間は真実を伝えない。怖いからだ。だから、「謝罪にはいくらアメフトカラーといえ、ピンクのネクタイは止めましょう」と言ってくれる人がいない。そうやって権力者は裸の王様と化していく。本当のことを教えてくれる人がいないから、監督も大臣も「なんで俺ばっかり叩かれるんだ!」と怒っているんだろうなぁ、と想像している。

 テレビ局でも、元局長で、定年になった後もまだ現場に大手を振って出入りする人がいる。圧倒的良識がある方々は「もう、定年したし、あまり堂々と毎回現場に顔を出すのは」と、挨拶後には静かに場を去る方々が多い。

 だが、「俺は元上司」という肩書にいつまでも執着したい人には、どの部下もタレントも、「ここはもうあなたの来る場所ではありません」ということを告げない。だから、本人は、永遠に「俺は元上司」という権力に取りつかれている。

 チヤホヤされ誰もが従ったのは権力者だったからで、今は、もう権力者ではないのですよ、ということを、誰も教えてくれる人はいない。

“特権”を利用しようとすると“利権”になる

 輝かしい肩書を持たずとも、ささいな利権があれば即権力者が誕生するのを私は見てきた。

 若手スタッフの仕事のひとつに“視聴率表を配る”というのがある。これは雑事に近い“仕事”なのだが、この仕事を使い分け出し惜しみすることによって、瞬時にそれは利権と化す。例えば、気に入らないタレントには視聴率の数字のみしかメールで知らせず、あなどれないタレントには折れ線グラフまで掲載された視聴率表が何枚も添付されてくる。

 数字しか教えてもらえなかったタレントは、「これだけ?!」と、他局との比較もできず自分の頑張りも結果も見れず、気落ちし、卑屈になり、まんまと権力につぶされる。

 視聴率を全員に配る、という仕事ひとつでも、それを小出しに利用してパワーゲームを繰り広げた途端、視聴率表は、利権となる。局長も権力者だが、ADも権力者になれる。

 あるスタッフたちと食事をした。すると初めての店なのに、奥のドアを開けて、いわゆるVIPルームへと案内してくれた。

 「ね? これが、タレントの持つ、利権よ」とスタッフたちに解説した。

 特権と利権は似ているようで違う。
 特権は、職業に自動的についてくる。
 その特権を、利用しようとした段階で、利権になる。