以前、ファッション雑誌の撮影があった。プロのメイクさんが付くという。ファッション雑誌なら上手いかもしれない、と、お願いすることにした。
マッサージやら白塗りやら…
まず驚いたのは、顔のマッサージから始まることだった。"素晴らしい"とも言えるし、"何を今さら無駄なことをやってんだ"とも言える。でも身をまかせることにしてみた。マッサージはヌルヌルするクリームをつけてする。だから、その後、それを拭きとったところで、洗顔しない限りヌルヌルしたままだ。で、そのヌルヌルが微妙に残ったままファンデーションを塗り、テカりきった顔に、「それだけ?」と、少なすぎるパウダーをはたく。
「え?」と思ったが、ほぼ薄化粧で、仕上がった。
少なくとも、その時点での私の正直な感想は、「テカテカして、脂ぎって、そのうえに、目も眉毛もはっきりしない、のっぺりした顔だなぁ」だった。しかし私は「プロの腕」に対する希望を捨てなかった。出来上がったファッション誌を見てみるまでは、そのメイクさんの腕というものは分からないではないか。
後日、ファッション誌が届き、写真を見ると…がっかりした。
テカテカして、のっぺりした顔、だった。魔法は起きなかった。
あるいは、京都で舞妓の化粧をやってくれるというので、お願いしたこともある。
私はこの白塗り化粧というのも自分でできる。化粧の要は眉のラインだ。日本化粧の場合、どういう筆の曲線で眉毛を流れるように書くか、が、命だ。筆だ。ペンシルではない。余計に難しい。
毎日、舞妓さん化粧をやっている日本化粧のプロにまかせるのだから、私は楽しみにもした。
目をつぶった状態で化粧はどんどん進む。
やがて、眉毛のラインが筆で書かれることになった。
そしてすぐ思った。
…違う!