それなのに、圧倒的男性組織でできあがっている政治にメスを入れようとばかりに登場したのが、“均等”と、“できる限り”とは。
 そこに、もし本気があるなら、“同数”であり、“罰金”であってほしい。

 だが、同数にしたところで、女性を取り巻く環境は変化しない。政治が先か、立候補できる環境づくりが先か、のジレンマが待つ。

 政治家がテレビで、「日本の女性は今やM字カーブではなくなった」と発言していた。
 出産で一度仕事を辞め、また復帰する。ただしその時はパートで。という日本特有の状態はもう脱却したという。その能天気な解釈に笑ってしまった。

 働き続けられる社会になり、もう男女平等は到達したと本気で理解している政治家がいる。
 出産で“いったん休む”間もなく働き続けねば食っていけない層が増えた、あるいは、いったん休んでなどいられないから、子供を産まず働き続けている、などの可能性がいつ消えたのか。

「女性がそれを望んでいる」って、ネタか?

 また、「女性の労働は主にパートや非正規労働だが、データによると女性自らがそれを望んでいる。その理由は、都合がいいから、が、最も多い」のだそうだ。

 笑ってしまう。
 “誰にとって”都合がいいのか考えてみる脳みそはないのか。

 家事に育児に奔走しつつ収入を得ねば生活できない現実にとって“都合がいい”のではないのか。“パートは女性が望む働き方”のごとく発言する男性政治家がいるが、では働く前の女性に聞いたことはあるのか。

 「将来の夢は、パートです」という女性を少なくとも私は一人も知らない。
 「将来の希望は、生涯、非正規労働者になり続けることです」といった夢も聞いたことがない。
 “現実問題”に最も“都合がいい”の労働形態がパートなのだ。

 誰にとっての都合のよさか。それは、女性にとってではない。現状に満足していて変化を望まない誰かにとって、だ。だが、データの読解の仕方によっては、この国はとっくに男女平等らしい。初耳だ。脈々と続く活動が生み出した「候補者均等法」にしても、どれほどの苦労が成立までにあって、この名前になったことだろうか。

 まったく、虚ろな笑いが止まらない。

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