「自分の妻の横で、妻に対して失礼やろうが。それと、地元で高齢者相手にケアハウスのような接客をやってくれている女性を自分の女のように言うな。あれだけ他人様の連れの女性の感想を言うなと言ったのに、なぜ辛抱できないのか。店が満員の時、なぜ店長が全員の串カツに目配りしつつ次の串に集中していることに気づいてやれないのか。最も集中させてあげなきゃいけない時に、なぜ店長を一人占めし喋り続けて自分が邪魔をしていることに気づかないのか」

 兄嫁は「洋子ちゃん。ここじゃなく、家で、家で」と私を止めた。

 「いや。家では遅い。教育とか社会性というのは、今、その時に教えなきゃ、あとで教えてももう忘れている。今。今がダメなのだと、今、教えなきゃいけない」と言った。

やれやれ

 「もう俺は喋らない」と兄はいじけた。

 帰り道で兄嫁が私にご馳走さまでしたと深々と頭を下げた。

 妹なのだからご馳走さまだけでいい。頭を下げる必要はない。気持ちはダイヤの指輪で十分嬉しい。

 だが兄は違った。何事もなかったかのように、「この足で地元のクラブいこーっと」。

 兄嫁は「もうやめなさい。帰りなさい」と兄を叱り、そして言った。

 「妹に、ご馳走さまは?」

 兄はしぶしぶご馳走さまを言った。人にご飯をご馳走になればご馳走さまを言う、ということも兄は学習していない。ほぼ一日を自分が機嫌がいいか悪いかだけで過ごす。機嫌を良くすればしたで、途端に調子に乗って社会性のない行儀の悪さが爆裂する。

 兄だけではない。そういうタイプの男性とも、私は仕事でご一緒することがある。その始末の悪いことと言ったらもう…。

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