やがて次なる同伴が入ってきた。キッチリと隙のないダークスーツにネクタイを締めた大企業系の男性だ。アジア系の女性を連れていたが、二人で赤ワインを飲んでいる。

 さきほどの中小企業のたたき上げ豪快社長タイプと違い、こちらはインテリお洒落系の男性だ。美味しい串カツを赤ワインで上品に食べている。

逆切れか

 不思議なことだが、この男性とアジア系女性ホステスとの会話はない。たまたま私の隣にそのホステスが座り、彼女はあまりの男性の会話のなさに私に声をかけてくる、予想外の展開もあった。

 訝しい思いがよぎる。誰とも喋る気はなく、美味いものを食しながら好物の赤ワインを飲みたいなら、1人で来いよ、と。連れの女性に失礼じゃないか、と。

 そうこうしているうちに、兄の機嫌は酒とともに良くなり、饒舌になった。今度は自分が今までしてきた仕事、家のこと、家の場所、全部喋った。…店中に届く大声で。

 「声が大きい!」と見かねた兄嫁が注意すると、「じゃあ、もう喋らない」と逆切れして大声をあげる。

 弱冠30代の店長のほうがこういう駄々っ子の幼児系年配男性の扱いを心得ていて、「大丈夫ですよ。僕も話好きだから」と笑顔でフォローしてくれる。

 「今時の若者は…」論は昔からあるが、この光景を見る限り、どうしようもないのは年配男性のほうで若い男性のほうがよほど大人でプロだった。

 同伴の男性たちはさっさと女性たちの働くクラブへと退席していった。

 行くクラブのない兄は、彼らが去るなり、まだ他の客がいるのに、女性鑑賞会の感想を放ちはじめた。

 「さっきのは、アジア人ホステスやな」

 「だから、そういう会話はここでは無粋やと教えたやろ」

 兄は、自分が同伴ではないことが悔しかったのだろうか。店長に「今度は僕の家の近所の飲み屋のねーちゃんと一緒に来るから、好きに喋らせてな」とニタニタ話しかけている。

 私はブチ切れた。

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