かつて、私がオーディションを受けて落ちた番組がある。その後、私がメディアで認知度を得だした頃、その過去を知らない局員から出演オファーをいただいた。「落としたくせに」と思い、いったんお断りしたが、「ぜひに」と言っていただき、それが長寿番組になったことがある。

 他者の評価とはそんなもんだ。私はずっと変わらない。相手の眼が変わるのだ。

 プロダクション主催のオーディションの審査員もさせてもらったことがある。出てくる若者の多くが、策を弄し、奇をてらい、力み、粋がり、過剰に自己演出する姿に吐き気がして会場を途中退場したことがあった。オーディションなのだから奇をてらうのもありだし、力むのも仕方がない。私が残念に感じたのは、どこかから借りてきたような奇のてらい方に自己満足し、恥ずかしげもなく披露するその姿勢だった。大事な場面で、借り物の自分で勝負して、その先どうするつもりなのか。

あなたの居場所か?

 私は知人の娘さんに助言した。等身大のあなたを出してくるように。そのあなたが落ちたなら企業に見る目がなかったということ。結果を自己否定に繋げてはならない。と。

 結果、「思う存分自分を出してきました」という報告の後、「落ちました」という連絡がきた。

 私はこれを聞いて、やっと、本音が言える、と思って返事した。

 ホッとしています…。

 本音を言おう。娘さんがテレビ局に入りたいというから応援したが、もし私に娘がいたとしたら、私は絶対に死ぬほど止めただろう。受験するな、と。