お料理を見たら分かるのだが、根菜類から葉野菜まで野菜たっぷり、タンパク質も肉、魚、大豆系と、多種多様だ。お料理とは"切る""皮をむく"作業なのだと、その終わらない「トントントン」で改めて気づかされた。もし、にんじんや大根を自分の歯でそのまま齧れば、誰も切らなくていい。トントントンとは、私の歯の替わりを他人がしてくれている行為だ。煮る焼くなどはレンジやIHがやってくれる。味付けもそう長時間かかる作業ではない。"お料理を作る"とは、"トントントン"を数時間、聞き続ける行為なのだと知った。

 宅配ビジネスで、各種おかずが盛られたプラスチックケース入りの弁当がある。あれを見て、「わあ、食べたい」という人がどれほどいるだろう。いや、いる。おそらくいる。だからあのビジネスが成功している。だが、お料理って「はい」と渡されて「おいしい!」となるのではなく、トントントン、の音と、やがて、グツグツグツと煮る音と、キッチンから流れてくる生姜やニンニクの香りなど、創作過程も含めて、"お料理"なのだと気づかされる。だから手作り料理はおいしく感じるのだ。時間をかけてその作品が出来上がるまで、ずっと"お料理"なのだ。

プロ主婦は違う

 出来上がった料理を見てまた驚愕し、同世代の働く友人に電話した。

 「自分でお料理して、何種類の野菜を取っている?」
 「せいぜい、2種類か、取って3種類かなぁ」
 「やろ!?私もそうだった。でもプロ主婦は違うよ」

 そう言いながら目前の料理をレポートした。

 野菜サラダの中身は、レタス、キュウリ、トマト、ブロッコリー。
 煮物は、豚とピーマンと那須。
 もう一つの煮物は、にんじん、大根、揚げ天。
 そして焼き魚。
 お味噌汁は、豆腐、揚げ、わかめ、ネギ、だ。

 「うわああああ!すごいっ」と友人が声をあげた。

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