イベント開始の挨拶は、もちろんオッサンの晴れ舞台だ。
ニコニコとマイクを握る。そして、私をステージに招く。
…はずが、私の名前を言えず、覚えておらず、パンフレットを探し、そこから私の名前を探し、やっと、今日のゲストとしての私の名前を言えた。
オッサン要件その10 人の準備にはうるさいが、自分は苦手。
私は呆れながらもステージに上がる。そして、そのオッサンをイベントの間、ずっといじり続けた。
イジメ? 仕返し?
いやいや、そうではない。それはオッサンがそういうことを好きなのを知っているから。
オッサン要件その11 かまってほしい。
だから、かまってあげた。ずっと仕事の間中。そして、仕事が終わっても。
仕事後、また私の控室には、直立不動の部下たちと、誰も座ることなく準備された10人分の椅子とテーブルに、私の隣がもう俺の席、とばかりにオッサンが座る。
オッサンが部下に尋ねた。
「何人、客が入ったんや」
「900人です」
「なんや、1000人いかんかったのか」