そんなこんなで、カニと、友との語らいを存分に楽しんだ翌日、チェックアウトしようとすると、中居さんが言う。
「お兄様から遙さんたちの分も頂いております」
慌てて電話をしたが、兄夫婦はチェックアウトした後で、電話もつながらない。それを聞いた友達は、「なぜ紹介してくれなかったの!」と怒り、私の実家までお礼に行くと言って聞かなかった。
私も、挨拶に行かなかった自分が意地悪に思えてきて、ビターな気分の帰路となった。
兄嫁、突き付ける
が、何か釈然としないものがあった。あの「あー、あほらし」とぬかした兄がそういう粋な計らいができるだろうか。これは兄嫁の差配に違いないと思い、帰宅後に電話をした。
「挨拶に行けばよかった。友達も実家に行くと言って聞かなかった」
「挨拶はいらん」
「挨拶くらい」
「だから、挨拶はいらんねんて」
兄嫁に言わせると、兄はただ、嫁以外の女たちに囲まれて食事がしたかっただけで、相手が大女優であろうが、一般人であろうが、誰でもよかった。そんな兄には挨拶など何の意味もないのだ、と。
ついでに言うと、前日まで「なんでお年玉やらなあかんねん」と怒る兄が、「香典ももらってない相手に…」と言うので、兄嫁が10年ほど前の過去帳を取り出し、かの友人から多額の香典をいただいていた証を兄に突き付けたという。