これを言うことで、妻がどう思うか、とか、社会的にどういった批判がくるか、とかいう想像力のフィルターを通さず、あるがままに、正直に自分を語った。およそ、脳裏に浮かぶもの、日頃感じてきたもの、それらすべてをぶちまけた。

 そうしたら、不倫疑惑騒動への釈明のために、妻の病状の公開、介護の疲弊、性的能力の低下、自身の病気、かかえるストレス、才能への自信欠如、疲れて引退、日本の高齢化社会への懸念、と、裾野が広がった発言になった。

 彼は、おそらくだが、それら当事者性の実感、というものを、他者目線で取捨選択したり、絞ったり、ということが、まず、できなかったのではないか。それが会見で最も私が感じた彼のあり様だった。

その状態こそが…

 結局ひとつひとつの発言を取り上げてテレビでは議論がなされているが、言葉の取捨選択がうまくなされていない彼の状態こそが、彼が一番に発しているメッセージだと思う。

 そういう体調で、精神状態なのだ、と、聞く側が理解せねばならないケースだと感じた。

 彼がかかったという肝炎だが、慢性疲労もつきまとうことだろう。介護の疲労に加え、肝炎の疲労、そして、この騒動だ。我々が想像する以上に、本人は疲弊している。疲れ切った男が、記者会見で「疲れた」と証明してみせた。

 その発言ひとつひとつを切り取る意味が、それほど重要だとは私は思わない。

 そして疲れた時に、起こしやすいのがまた、判断ミスだ。

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