家族行事じゃないから気楽に戻れる。そして帰宅時に兄嫁が私にそっと渡したもの。

 「はい。これが、あなたの家のお雑煮の味よ。我が家は、白みそで大根と人参を入れるの。そして餅ね。元旦はこれらを一緒に煮て、お雑煮を食べなさい」

 兄嫁は私の家族拒絶をよく理解してくれていた。

 義妹がずっと実家の雑煮を食べていないことを案じてくれたのだろう、一人分のお雑煮セットをもたせてくれたのだった。

 正月に一人で雑煮を作って初めて、「へぇ。大根が入っていたのかぁ」と、知った。

 亡き親の味を、その家に嫁いだ高齢の兄嫁から教わるという不思議。

突き放す愛情

 夕方、電話が鳴った。留守電にメッセージは入ってなかったが、兄嫁からだった。

 翌日用事を聞くと、「せっかく家族全員揃ったのだから、やっぱり、晩御飯に来たらどうかな、って思っただけ」という。

 それを留守電に残さない兄嫁は、それだけ私の家族ごっこ嫌いを理解してくれているということ。絶妙だ。

 もし留守電にそれが入っていたなら、こうメールを打っただろう。

 「だから、行けへんっちゅーねん」

 毎年毎年悩みながら、そして帰ってみては誰かと本気で喧嘩をし、会うと口論にしかならない家族とそもそも会う必要があるのか、と、悩み抜いてきて、今年、初めて、迷うことから解放された。

 解放してくれたのは、「はい。家族の味よ」と言って渡された一人分のお雑煮セットだ。

 愛情の証でもあり、「正月は一人で過ごせ」という突き放すメッセージでもあった。が、それを人からしてもらってやっと、自力だけではまだ迷ったであろう家族病から解き放たれた。