中国も、労働年齢人口の減少、内陸からの安価な労働力の沿岸部への移動がピークを打ったこと、などから、潜在成長率は低下していき、先進国になる前に息切れする恐れすらある。また、国内の格差は大きく、地方政府を含めた金融システムはおそらく過剰債務の状況にある。
この中で付加価値創造力の高い産業構造にシフトするためには、米国のいいなりになって、AI・ビッグデータの世界での進歩スピードを緩めるわけにはいかない。そんなことをすれば、一党独裁が揺らぐような事態にもなりかねないし、アヘン戦争以来の「西側の経済成長から置き去りにされた」国に逆戻りすることは、国民感情的にも到底受けいれられないだろう。
変革に取り組む企業に必要なマインド
ただ、この「国内事情」を少しでも解決するには、双方が一定以上の経済成長ができるなんらかの新しい仕組みが不可欠だ。そこに至る第一歩として、フリードマンのいう「smart and honest」なこれまでの成功要因の振り返りと謙虚な受け入れがどうしても必要だということは、その通りだなあ、と思っている。
さて、話は変わるが、様々な企業がデジタル時代に向けた変革に取り組み始めたのは、ご高承の通り。ただ、中には、これまでの成功要因をきちんと総括せずに、RPAだのAIの活用だの、新しいものの取り入れだけに血道を上げている例もある。
米中のような競争環境の中でのsmart and honestに限らず、大きな変革を進める時には、常にsmart and honestな過去の振り返りが必要だと思うのだが、いかがだろうか。
福沢諭吉は「文明論の概略」の中で、自分は江戸に生きた人生からの学びと維新以降の人生での学びを比較して、その上で、何をなすべきか確実な議論をしていく、という趣旨のことを書いている。まさに「正直な振り返りに基づく、賢明な将来の議論」だ。
私自身も、この辺り、肝に銘じて、その言わんとするところを謙虚に取り入れながら、新しい時代作りにかかわっていこうと思う。
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