
『フラット化する世界』や『遅刻してくれて、ありがとう』で知られる米国のジャーナリスト、トーマス・フリードマン。彼が先だってNew York Times紙に寄稿した米中貿易戦争についてのコラムが大変面白かった(2018年11月13日付本紙、インターナショナル版は同15日付)。この件に関しては様々な報道がなされているが、これまで私が見た範囲では、最も的確かつ前向きな論点整理がなされていたという印象だ。
フリードマン氏は、中国に対し、トランプ大統領が本気で立ち向かおうとしていること自体は評価しつつ、
- 貿易不均衡ではなく、市場アクセス問題に切り込むべき
- 中国の封じ込めではなく、双方がメリットを享受することができる形での解決を志向すべき、
と述べ、そのためには、
- 両国ともが”smart”(賢明)であり、かつ、それぞれのこれまでの成功の理由を”honest”(正直)に認めなければならない、
と主張する。
「米中両方とも、賢明で正直になれ」
具体的に「smart and honest」とはどういうことか。
まず中国に以下を謙虚に認めるべきだと述べる。
- 中国のこれまでの急速な成長には3本の柱がある。
- 第一に、中国人自身のハードワーク、インフラ・教育・研究開発への賢明な投資、民間企業間で徹底的に自由競争させた上で勝ち組を政府が庇護・支援する経済システム(例えば、アリババ、テンセント、DJI)。
- 次に、WTOルールに対するシステマチックな「ごまかし(ないし、ずる)」。具体的には、外資に対する技術移転の強制、知的財産の盗用、一方的な貿易ルール運営。
- そして、(中国はこれまで公には認めてきていないが)米国の政治家と海軍によって守られてきた安定的なグローバル貿易システム。特に、太平洋の米海軍力が、中国の貿易相手国に対して、「中国が経済的に他を圧する力を持っても、それが地政学的にも他を圧することにつながらない」という安心感を与えてきたこと(要は、第2次大戦後の米国の覇権がなければ、中国の急激な近代化と経済成長はなかった、ということ)。
一方、トランプ大統領が認めるべき米国のこれまでの成功要因として、以下をあげる。
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