(写真:PIXTA)

 知人ががんを患い、手術後の抗がん剤治療もしながら、がん患者としての様々な学びを本にすべく原稿を書いている。ご本人は医師ではないが、たまたま広い意味での治療に携わってきた人であり、自分を実験台にしながら、手術後のQOL(生活の質)を高めるために患者が何をすればいいか、様々な形で試みてきたのだ。

 その話を伺い、初稿を読ませてもらって感じたのは、(プロの医師、医療チームと協力しながらではあるが)患者自身が学び、行動することで、自分自身のQOLを改善する余地がいかに大きいか、ということだった。

 特に印象に残ったのは、抗がん剤治療の苦痛を和らげる上での栄養補給の重要性。広く知られているように、抗がん剤投与にはどうしても一定の副作用が伴う。特に、吐き気の辛さは想像を絶するものらしい。以前より効き目が強い制吐剤が出てきたとはいえ、手術をふくむ治療全体の中でも、患者を苦しめるものの一つだという。

 ところが、タイミング良く、事前、事後に適切な栄養摂取をすることで、体感的には吐き気が2割程度に収まったりすることがあるらしい。具体的には、投与前になんとカツ丼を食べておく、といったようなことだ。

 この辺りの理論的背景の一部は、藤田保健衛生大学医学部の東口高志教授が一般向けに書かれた『「がん」では死なない「がん患者」:栄養障害が寿命を縮める』(光文社新書)の中で紹介されている。

基礎知識を蓄えて、異分野同士の媒介に

 要は、がんがタンパク質や脂質、そして糖の代謝異常を引き起こすため、そもそもがん患者は栄養不良に陥っていることが多い。その中でも、たんぱく質の一種であるアルブミンが不足していると、薬の副作用が強く出てしまうということらしい(ちなみに、私の知人は、抗がん剤治療が終了した後に、この本を読み、東口先生の知遇も得た。先生との交流の中で、自分の体験が臨床経験結果とそれを踏まえた理論と整合しているとのことで、執筆の意を強くしたとのこと)。

 残念なことに、まだまだ多くの医療現場では、外科的手術そのものとは少し離れた「栄養とがん治療のQOLの強い関係性」にまで気を配られているわけではない。さらに、術後の抗がん剤治療になると、自宅から通院する場合も多く、入院時とは違って、自分自身で食事をどのタイミングでどう摂るかという意思決定をしていかなければならない。

 また、これ以外にも術後にどういう姿勢をとったり、ストレッチをしたりするかで、予後にどんな違いが出るか、など知人は様々な体験を綴っていて、こういった話は、医療関係者からはさらに遠いところにあると言わざるを得ない。

 これまでも、がんに罹患したら標準治療をきちんと理解した上で、どういう治療方針をとるべきか、主治医と対話すべきだ、といったことが議論されてきている。これは、プロである医師と、きちんとコミュニケートし、自分自身で自分の治療計画を意思決定できるようにする、という話だ。