例えば、神社・仏閣などの文化遺産。豊かな自然に、ヒトのきめこまかい手が入ることで生まれた里山や棚田。あるいは、和食を中心とする食文化の中核部分。これらは、長い期間をかけて、積み上げてこられたものであり、現在はその恩恵を得ていると考えてよかろう。当然、現在でもホテルやリゾートなど、企業レベルではハコモノやスタッフ教育といった形で投資と有形・無形の資産作りが行われている。

 しかし、それを超えた「将来の観光を支える共通資産」を作るための投資は、限定的なように見受けられる。私自身が一番気になるのは、景観への投資不足だ。

 素晴らしい海岸線の眺望がある場所に、大きく掲げられた「ゴミを捨てるな」という看板。古い温泉街にいくつも残る廃業した大型旅館の建物。あるいは、景勝地の周辺で、まったく景観を考えずに無秩序に立ち並ぶ土産物屋や食べ物屋さん。これらは、地域全体で地道な投資を何年も続けていかなければ、将来の顧客を呼べる景観資産になっていかない。

将来世代につけを回すな

 私権の制限となる部分、あるいは、金融機関も含めた過去の負の遺産の処理、などなど難しいことはわかるが、だからと言ってあきらめていたのでは、将来世代につけを回すだけだ。

 人口減の日本で、交流人口を増やし、経済の活性化につなげる観光。こういった狙いは正しいが、過去の遺産を食いつぶし、自分たちの世代だけがメリットを享受するというのは、少し恥ずかしい気がする。

 国レベルの観光政策は、かなりやるべきことをやってきた。そろそろ、地域レベルで、「民間企業と住民が主導し、金融機関と自治体がサポートする」、そんな景観への将来投資が増えていくべき時期なのではなかろうか。