観光立国の達成は、まだ道半ばだ(写真=PIXTA)

 企業分析の世界で、ROA(総資産利益率)やROIC(投下資本利益率)というモノサシがよく使われるのは、ご承知のとおり。前者は、保有している資産をどううまく使って利益を出しているか。後者は、大きな意味での投資額を自己資本と負債の合計と捉え、その投資をどううまく使って利益を出しているか、を図るモノサシだ。

 これらの結果は、同業比較や時系列比較を通じて、経営者の通知表のように扱う向きもあるのだが、それには注意が必要である。何故かと言えば、資産を作り上げた経営者、投資資金を確保して投じた経営者と、その果実を享受する経営者が、必ずしも同一ではないからだ。

 歴代の経営者が営々と蓄積した資産、あるいは、大変な苦労の末に調達した投資資金。事業投資とそれが生む利益が計上されるタイミングには、必ず時間差があり、資源投資や新薬の開発のように時には何年、何十年もたってから利益が計上される場合もある。したがって、このようなケースでは、現在の経営者の貢献は相対的に少なく、過去の先達の遺産に負う部分が大きい、ということもあり得るのだ。

 さて、この話は、空前のインバウンドブームにわく我が国の観光関連産業にも当てはまる部分があるのだが、その前に、今の観光の状況について、重要な2点をおさらいしておこう。

観光立国はまだ道半ば

 まず、インバウンド観光の需要面での大成功。小泉政権時に開始したビジット・ジャパン・キャンペーン。初年度である2003年には、521万人に過ぎなかった訪日外国人数は、2017年には2869万人に達した。

 これは、アジアを中心とした中流層の激増が最大要因ではあるが、ビザの緩和、LCCの積極導入といった政策の大きな転換が効いて、アジアのみならず欧米などからの需要も大きく取り込むことに成功している。

 次に、(これは過去このコラムでも指摘したが)観光立国の達成は道半ばであること。観光関連産業の生産性は著しく低く、米国や欧州主要国の半分以下だと考えられている。これに伴い、大部分の働き手は非正規雇用かつ低賃金に甘んじている。

 観光「立国」になるためには、地域で良質な雇用が創造され、生産性向上に伴って、賃金が上がるということが不可欠だ。そのためには、プレイヤーの健全な新陳代謝、そして、コト消費増や富裕層増による旅行者一人あたりの単価アップが必要となる。

 さて、この2点に加えて、考えておかねばならないこと。それは、現在の訪日観光ブームは、先人の積み上げた資産や投資に負う部分が大きいことであり、これを持続可能なものにするためには、企業レベルを超えた将来投資が必要であるということだ。