
巨大企業があらゆる情報を手に入れ活用する世界
シリコンバレー出張の帰路、機内で「ザ・サークル」という映画を見た。日本でも11月に公開されるようだが、デイブ・エガーズの小説を基にしたこの映画、米国では2015年のシアトル・フィルム・フェスティバルで初公開されたものだ。
ネタばれになってしまってはいけないので、詳細を書くことは避けるが、FacebookとGoogleを合わせたような巨大SNS企業を巡り、デジタル社会の暗部が描かれる一種のディストピア物語である。トム・ハンクスが演じるカリスマリーダー率いるCircle(サークル)という企業は、すべての個人情報を透明化することで、犯罪を減らし、政治家と有権者の行動を変える、さらには海での事故等も減らせる、と主張し、その方向でサービスを拡大していく。
随分前に、ジャック・アタリが『21世紀の歴史』(作品社)という本の中で、すべての個人情報が保険会社に集まる未来社会を描いていたが、この映画の中では、ネット企業が情報を手に入れ、活用する立場に立つ。
この情報入手の「みそ」は、個人が自らの情報を積極的に提供する仕組み作りだ。理念や価値観を通じたエモ―ショナルな働きかけ、「便利さ」「効用」による行動づけ。さまざまな人を動かすインセンティブ・ディスインセンティブが使われていく。
自ら進んで個人情報を提供してしまう仕組み
このあたりの具体論は、映画をご覧いただくとして、「個人に関する情報がどんどん蓄積されていく社会」、「個々人が自分の情報を喜んで提供する社会」のメリット・デメリットについて、いろいろと考えさせられる映画だった。
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