不正確な伝承で「思い込み」を作り上げていた

 さて、第二の学び。それは、不正確な伝承をもとに、各国ともに相手に対する「思い込み」や「パーセプション」を作りあげがちだ、ということである。

 日本について言えば、さまざまな伝承を通じて、古代以来、新羅(そして高句麗、高麗)を敵視する見方が、指導層に定着していたという。

 また、外交上の方便として、朝鮮半島の国から日本への贈り物が、(日本は自国の権益を有していた地域と認識していた伽耶に関わる)「調」(税の代替)とされていたことや、中国から朝鮮半島での軍事指揮権を一部なりとも認められた、ということから、中国に続く大国は日本であり、朝鮮半島諸国はその下の格である、というパーセプションも、綿々と続いていたようだ。

 これが、秀吉の行動や、近代における日本軍部の行動に影響を与えていたことは、間違いなさそうだ。

「小帝国意識」を持っていただけに大きかった衝撃

 逆に、朝鮮半島諸国の方も、中華文明により近い自国が、文明・文化に劣る日本に対し、中国由来の文明・文化を伝えているという意識を持ち、(ある意味日本と同様の)小帝国意識を持っていたとされる。それだけに、秀吉の侵攻や明治以降の日本による属国化は、大きな衝撃を持って受け止められただろう。

 自らの思い込み、そして、相手側の思い込み。彼我双方の思考パターンやその前提を深く理解することを怠ると、感情論やムードに煽られて、不必要な戦いに巻き込まれてしまったり、外交上の大きな掛け違いにつながったりしかねない。この点も、東アジアの緊張が高まる今、再度、肝に銘じておくべきことのように思える。

 北朝鮮に関わる日本の安全保障上の課題は大きい。その中で、サイバーや宇宙を含む直接的な軍事力、抑止力のリアリズムに基づく把握は、本当に重要だ。

 しかし、そこに留まらず、中国と朝鮮半島の複雑な関わり、そして歴史的な背景に基づく各プレイヤーの思い込みと相手に対するパーセプション。これらも深く見つめていくことも、したたかに生き残る日本となるために、負けず劣らず重要なのではないだろうか。