リスクが顕在化した時、とるべき手段とは?

 こういうリスクが顕在化すると、どういう反応が起こるだろう。日本の場合なら、かなりの確率で、バックアップ手段をもとう、ということになる。システム上のバックアップ手段ならよいのだが、下手をすると、ハッキングされないアナログな手段、たとえば昔ながらの写真を張り付けた紙ベースの身分証明書を持ち歩いてもらおう、などという笑えない話になりかねない。

 昔、といっても1980年前後だが、航空会社で働いていたことがある。空港の現場がどんどんコンピュータ化され、チェックインのシステムなどがもの凄く効率化されつつあったのだが、時々、システムダウンすると、昔ながらの仕組みがすぐに再現される。大きな紙に飛行機の座席配置が示され、各座席の部分はシールになっている。旅行客一人チェックインするたびに、そのシールを顧客のボーディングパスに張り付けて、手渡しするのだ。

 ただ、時を経るにつれ、このアナログなやり方で一便あたり数百人の顧客をハンドリングできるスキルを持つ人が減っていき、実行が難しくなっていたのを記憶している。

昔ながらの手法に“先祖返り”するケースも

 デジタルシステムの脆弱性をカバーするには、まずはデジタルなバックアップ手段を考える、というのが筋なのだが、場合によっては、旧来型のアナログシステムの錆を払って、代替手段にすることもあろう。ただ、この場合は、それを運用するスキルの継承が必要になる、という話だ。

 実際に、前述のレポートの中でも指摘があったのだが、米国では海運用のGPSシステム(全地球測位システム)への妨害が懸念されており、昔ながらの長波・短波無線の再活用が検討されているらしい。

 (米国では長距離トラックの有料道路利用料がGPSデータを活用して決められているので、それを避けようとする。あるいは、飛行禁止区域でドローンを飛ばすために、GPSデータでの地域特定をさせないようにする──など、GPSへの妨害行為がどんどん増えているのも、あまり知られていないが重要な事実だ。)

 この場合も、実際に運用できる人がいるかどうかが、GPSに加えて、既に使われなくなったシステムをダブルで搭載することと併せて、大問題になっている由。

 なんだか妙な話になってしまったが、サイバーセキュリティが避けて通れない社会課題、ビジネス課題になった現在、技術のジャンプと同時に、旧来型の仕組みのうち、残すべきものとそうでないものを分別していく知恵が必要だということを示唆しているように思う。
 いかがだろうか。