顔画像と指紋、瞳の虹彩画像を採取することにより、一人ひとりに固有の12桁のID番号を付与するインド政府による生体認証システム「Aadhaar(アーダール)」の登録現場。インド版の“マイナンバー”と言える。国民の9割近くが既に登録を済ませているという。(写真は、インド第3の都市バンガロールのあるカルナータカ州の公式ウェブサイトから)

一世代前の技術導入が遅れた地域で、最新技術が普及する

 社会のインフラとなるような技術。その進化が早いと、一世代前の技術導入が遅れた国で、かえって最新技術によるインフラ構築やサービス導入が起こることがある。固定電話のネットワークも、銀行ATMネットワークも、十分に広まっていなかったアフリカのいくつかの国で、携帯電話網が急速に広がり、モバイルユーザー間でのP2P送金が世界有数のレベルで活用されるようになった、というのはよく知られた例だろう。(2007年7月27日配信「新市場を作り出す『次の10億人』」参照)

 同様のことが、インドの個人認証の世界で起こりつつある。2009年から導入が始まった「Aadhaar(アーダール)」というシステム。これは、国民一人ひとりの生体認証情報(biometrics)を登録し、個人認証に使おう、というものだ。具体的には、瞳の虹彩、指紋、そして顔写真が個人を特定するための情報として登録されるのだが、今年の時点で、約11億7千万人、国民の9割近くが既に登録を済ませているという。

生体認証を使った“マイナンバー”がインド社会を変える

 元々は、非識字者に近いような人たちも簡単に銀行口座を作ることができるようにするという社会政策的な位置づけが強かったように記憶しているが、その活用範囲、特に義務的に使われる範囲が広がっている。たとえば、死亡証明書発行時、低所得者向けの補助金受領時、土地の登記時、などなどの場面で、個人を特定する際には、このAadhaarの登録情報が必須とされているようだ。