アンチトラスト法は、工業化モデルに照準を置いたまま

 ただ、これらは設備投資能力と規模の経済のメリット享受、そして結果として得られた優越的地位の濫用、という工業化社会モデルでのアンチトラスト法であり、規制だった。急速に進むデジタル革命、そしてデータ獲得能力とその寡占を利用した圧倒的な競争優位性。これに対して、競争を担保する方向での有効な手は打たれてこなかった。

 この経済の主役の変更と規制の前提のずれ。これが、いつまでも続く保証はない。

 ここ何年か、欧州と米国の間で、インターネット企業が獲得するデータの取り扱いについて、激論が交わされてきた。単純化すると、自国企業が強い米国は自由なデータ活用によるイノベーション創出を主張、一方、欧州側はユーザー保護の観点からデータ活用やデータ保持の場所について一定の制限を加えることを主張してきた。

 この議論は、データ活用とイノベーションというメリットをどこまで重要視し、企業に自由を認めるか、ということだが、ややもすると、本来自由な競争を担保するために重要なアンチトラスト、公正競争の議論と混同されてきたところがある。

いよいよ巨大デジタル企業がターゲットになる?

 イノベーションは追求するが、だからといってTech Titanが独占・寡占的地位を濫用してよい、ということにはならないはず。最近になって、米国でもようやくこういった論調が強まってきている。リーマンショック以来、金融産業に対して厳しい目が向けられてきたが、次は、巨大なデジタル企業がターゲットとなるかも、という意見も散見される。

 実際に、米国議会でもホールフーズ買収に関してアマゾンを呼び、話を聞くべし、という声が複数の議員から出されている。もちろん、これは既存小売りの衰退と雇用へのインパクトを心配してのことだが、その延長線上には「データ寡占の是非」という論点がある。ことと次第によっては、Tech Titanの競争力を削ぐ方向での規制強化が、俎上に乗ってもおかしくはない。

 冒頭にご紹介した記事は、従来型小売業の株の暴落に賭けるヘッジファンドの話に触れている。彼らが実際に大きな収益を得られるかどうかは、案外アンチトラスト法とその規制運用次第かもしれない。