当然、建築物だけでなく、人のスキルや仕事を柔軟にシフトさせる、という仕組みも求められる。

 考えてみれば、専門特化した人材を配置し、停止しない長い製造ラインを作り生産性を上げてきた製造業では、多品種化、という柔軟性を求める流れのなかで、多能工によるセル生産というイノベーションを起こした。

変化の時代を乗り切るためのイノベーションを

 医療や介護の世界でも、とがった専門性を持つ人材を育成しつつ、スキルシフトや広い範囲をカバーする人材育成・配置を行う。こういう一種のイノベーションが不可欠だ。実際に、先端的な試みをしている病院では、専門性を高めつつ、必要に応じて、診療科をまたげる看護士を育成し始めている。

 一言で言えば、人材を含めた「柔軟なシステム構築」ということになろうか。

 何度か書いたことだが、高齢化・人口減少は、日本だけのことではない。東アジアではまもなく同じことがあちこちで起こるし、今世紀半ばまでには大多数の国で高齢化・人口減少が起こる。世紀末までのどこかで地球全体の人口がピークを打ち、その後、減り始める、というのは、そういうことだ。

 建物、あるいは人を含むシステムを、この大きな流れに適した形で、「縮小しやすい」「壊しやすい」といった特徴をもつ、柔軟性の高いものにする。この点でのイノベーションを起こせれば、日本自体の経済が人口構造変化を乗り切れるだけでなく、その後の世界高齢化の中で、大きなビジネスチャンスもやってくる。ちょっと大きすぎる夢かもしれないが、最近はこんなことをつらつらと考えている次第だ。