ところが、団塊の世代が小学校・中学校で教育を受けていた時代とその前後を思い起こしてみよう。その前後の世代より、1学年50万人以上も多い世代が義務教育期を通過するということで、学校数が増え、さらにプレハブ校舎をはじめ、建物のキャパシティも大きく増やすことになった。しかし、その後は、急激に必要キャパシティは減り、学級数の削減、そして学校の統廃合、ということにつながっていった。

キャパシティーを増減できることが望ましい

 病院の場合も、高齢者医療に必要な病床数の増加が想定されるが、その後、確実に医療需要は減っていく。医師や看護士などのコメディカル(医療従事者)の必要数も増えるが、これも一定期間のことだ。さらに、診療科別の医師の必要数も今とは異なるのだが、教育・スキルアップには長い時間がかかり、そして再度ミスマッチの時期がやってくる。

 需要増(患者数増)の波が継続する時間軸と、供給側(病院施設や医療サービス従事者)の増減・リシャッフルが可能となる時間軸が異なることから、当面の不足、長期での余剰、という構造的な課題が生じてくるということだ。もちろん、その後、介護需要に大きな波が生じ、そして「多死」という波も必ずいつかはやってくる。

 こう考えていくと、病院施設は、できる限り柔軟にキャパシティを増減できる建築仕様にすることが望ましい。内部の診療科別の枠組みも、需要の変動に応じて、ハードも人員数も「動かしやすい」仕組みが必要だ。もっというと、現在の規制の枠組みを超えて、医療と介護の壁を壊し、ハード・ソフトとも「医療から介護へのシフト」をしやすくすることが求められてくる。

例えば豪州にある、テント形式の高級ホテル

 建築は素人なので、的外れかもしれないが、たとえば式年遷宮で何十年かごとに建て替えるシステムをもっている神社の建物。日本の伝統的木造建築の多くがそうであるように、材料を丁寧にばらしながら建物を壊し、さらに新しく作る、という仕組みができているようだ。

 あるいは、オーストラリアのエアーズロック(ウルル)の近くにあるLongitude(ロンギチュード)131というホテル(この記事の冒頭の写真)。これは、建築が厳しく制限された地域の中で、何棟ものテントを使ったコテージを組み合わせ、5つ星リゾートを作り上げているのだが、退出や建て替えは比較的容易だろうし、長期的な自然へのインパクトの極小化も図られているように見受けられる。こういった「柔軟な」建築物へのシフトがもっともっと語られてもよいような気がする。