グローバルに伝えていく日本酒文化の幅をより広げ、熟成酒や燗酒文化を加えていくことを考えると、この辺りのきちんとした理論化と整理が必要だな、と常々考えていたところ、先だって、貴重な体験をさせていただき、「理論化と整理」に光が見えてきた。

 福井の銘醸「黒龍」の水野さん、そして群馬で群を抜く「水芭蕉」の永井さん。このお二人のご当主が醸された熟成酒、すなわちビンテージ・サケを飲みながら、お二人がどういうお考えと手法でこれらの酒を醸し、日本酒の熟成文化を広げていこうとお考えか、そのあたりをじっくり聴かせていただく、という贅沢な機会である。門外漢が的外れな質問をするのに、お二人とも本当に丁寧に答えてくださった。

 ワインから入った飲む側の人間として、勝手な感想を持ったのだが、この二蔵の熟成酒は、酒質が綺麗だがその奥に複雑性を秘めた、質の高いブルゴーニュの赤に似ている、ということ。実際に、お二人とも「綺麗で複雑」という世界観で熟成に耐える酒作りをしておられるということだった。ワインで言うと、ローヌやカリフォルニアワインの一部にある「インパクトがあり複雑」という世界観の酒もあるのだが、日本酒の世界でも同様の作りをしていらっしゃる蔵もある。

日本酒を「食中酒」に

 この辺りを、合わせやすい食べ物や醸造の特徴を合わせて伝えれば、日本でも海外マーケットでも理解されやすい「古酒」ないしビンテージ・サケの「ものさし」ができるように思える。

 本当に質の高い熟成酒を作るには、醸造プロセスの中で、仕事をやりきる強い麹・酛(もと)が大事なのでは、という仮説を素人なりに持ってきたのだが(実は、ワインのエキスパートの方々がブラインドで選ぶ日本酒にこの手が多い)、この素人仮説も、当たらずとも遠からず、ということで色々教えていただいた。さらには、熟成させる温度による違いなど、本当に奥深い世界で、その一部を垣間見るだけでも感激の連続だった。

 私などよりもっと日本酒の世界に詳しい方々の助けも借りながら、日本酒文化の幅を広げていこうとしておられる蔵元を支援し、ワインと並ぶ「食中酒」として、そして「ストック資産」にもなる日本酒の世界を実現するために、次は何をしようか、とワクワクしながら考えている。

 もう少しまとまったら、ぜひ読者の皆様にもご報告しますね。それまでの間、それぞれの場で、ぜひぜひ食中色々な場面で日本酒を飲んでいきましょう!