もちろん、自社内では両方を持つことは無理だ、と考え、外に自らとの違いを求めて、硬い組織と柔らかい組織が組むというやり方もある。ベンチャーやデジタルプレイヤーとのアライアンスで、バーチャルな硬軟両面作戦を取るということだ。

 こういった場合には、リスクリターンのシェアをどのように設定しておくか。この初期設定を契約に織り込んでおく段階で、組織文化の違いによるすれ違いが決定的な亀裂になることが多いようだ。硬い大企業の側だけに問題があるのではなく、柔らかいベンチャーの方が、自分のこれまでの成功体験とあまりに異なる世界を理解できず、必要以上にフラストレーションを感じたり、不信感を抱いたりすることも数多い。

経営学上の大きな課題であり続けるだろう

 この「硬い組織と柔らかい組織の両立ないし融合」というテーマ。おそらく今後の経営学上の大きな課題であり続けると思う。

 ビジネスから離れてみると、世の中には、状態に応じて、あるいは視点によって、柔らかさと硬さの両方を持つものもある。たとえば、衝撃を受けると硬くなる素材がその一例だ。あるいは水のように柔らかさと硬さの両方を持つものもある。温度が変われば、流体(水)から固体(氷)に、あるいは気体(水蒸気)に変わる。さらに、ソフトに見える水の流れも、量が増え、流れるスピードが速くなると、濁流となって、まるで硬質な岩石のように、流れの中や周囲にあるものに、強烈なダメージを与え得る。

 こう考えると、単純な二分法を超えて、対処するやり方も出てくるのかもしれない。

 ただ当面は、少なくとも以下のような手立ては講じておくことが重要だと思う。

(1) 組織文化、人材、行動規範の違いを、言葉にし、違いを明確にする。

(2) 「異文化理解」が不可欠だと、経営層からミドルまでが骨身にしみて「感じる」場を作る。大真面目で異なった文化を持つ会社を訪ね、交流する、といったベタな手も有効だし、最近増えてきたLGBTをはじめとしたさまざまな異文化を理解するワークショップも実は役に立つ。

(3) まず、何人かの外に開かれ、複眼を有する「異文化理解者」をリーダー層の中につくる。すべての人が「異文化理解」の先導役になれるわけではないし、なる必要もない。ややクリシェのような(常套的な)たとえだが、勝海舟、坂本龍馬、福沢諭吉といった世界情勢を睨むことができたリーダー層が幕末・維新期の日本の方向づけに大きな役割を果たしたし、ペリー来航から大政奉還までの間に、150人にのぼる若者が「異文化理解者」たるべく欧米に留学したという事実をもう一度振り返っても良いと思う。

(4) ややもすると「硬い」ことよりも「柔らかい」ことが重視されがちだが、それぞれに強みがあり、価値を生む力があることを再確認し、戦略的に「硬さ」「柔らかさ」をデザインし、マネージしていく経営意思を持つ。

 今の時代環境は、意図的に「柔らかさ」と「硬さ」をデザインし、マネージすることを要求していると感じている。このテーマ、これからも引き続き、追いかけていきたいと思う。