また、依然世界第3位の経済規模、第2位の個人金融資産、第3位の株式市場時価総額、を有する日本なのだから、高価格帯マーケットももっと動いてよいはずだ。

 この上位国との違いは、見方によってはチャンスだとも言える。やりようによっては、このあたりに、日本文化市場を大きく伸ばすことができる余地が残されているのだから。

日本美術のストックを買い取る公的ファンドを作る

 では、ストックを動かしていくためには、どんな手立てがあるだろう。

 第一に、ストックを市場に出すインセンティブを作ること。具体的には、団塊の世代より上の方々の所有するストック、膨大な数がある国内の美術館・博物館の保有するストック、バブル期以降企業が保有し続けているストック。この3つが市場に出てきやすくすることだ。しかも、貴重な日本美術がすべて海外に流出しないようにできれば、なお良い。

 このために、公的な器、たとえば時限的に10年間、日本美術のストックを買い取る公的ファンドを作る。このファンドは、美術品の真贋を含む目利き機能を持ち、国内に残すべきものと、グローバル市場で流通させるものを仕分ける。このファンドに売却した場合、個人の相続税、あるいは企業の所得税上、一定の優遇措置を与えることができるようにすれば、相応のインセンティブになるはずだ。

 過去には相続税の対象として捕捉されたくないお金を美術品に変えることが、かなり行われていたということも聞く。これらをきちんと申告し、その上で公的ファンドに売却することが、税メリットを生むようにするのは効きそうな気がする。また、企業保有の美術品についても、必ずしも買った美術品の活用がなされているケースばかりではない。しかもバブル期に買ったものを今売却すると売却損が出るようなケースもかなりありそうだ。このあたりをうまく税的に処理できるのであれば、保管コストや将来の修復コストも考えると、売却しようという向きもあるだろう。

一部の収蔵品を、やる気と高い能力を持つ施設に移す

 美術館・博物館のストックについては、少し話がややこしくなる。そもそも、高度成長期に我も我もと、日本の津々浦々で美術館・博物館ができ、その時期には税収も豊かだったせいか、バブル期を中心にかなりのものが国内外で収集された。しかし、その後、入館者減、予算減に見舞われ、収蔵品の修復が十分に行われなかったり、一定程度は必要なストックの入れ替えも、ままならないケースが見受けられる。もちろん、アップダウンの中、地域に縁のある作家にフォーカスしたり、質の高い企画展で評価を受けたりする美術館も存在するのだが、相当、二極化が進んでいる。