ポジティブ感情は柔軟な発想を引き出す

 次に、第2のテストが行われる。最初に見たのとは別のビデオクリップを見せられた後、被験者は自分が最も強く感じている感情を1~2個、紙に書き落とす。

 その後、可能な限りその感情に自分自身を同一化するように求められた上で、今どんなことをしたいか、について、“I would like to (私は~をしたい)”で始まる文章を一定時間内に書くように指示される。フォーマットは最大20個の文章を書くことが可能となっており、豊かな発想がわく状態、柔軟で創造的に考えることができる状態、だと、より多くの文章を書ける、ということになる。

 これら、第1・第2の両テストの結果明らかになったのは、両方を通じて、ポジティブな感情(特に「楽しい」「充足感がある」という感情)を持つ状態だと、注意力の範囲が広がり、かつ柔軟で創造的な発想が可能となる、ということだった。(ちなみに、この実験だけでは、ネガティブな感情を持つことと、注意力の範囲の狭まり、あるいは、クリエイティブな力を出しにくくする、ということとの相関は、科学的に有為な形では証明できなかったとのこと)

 これまで言われてきたこと、あるいは実務の中で信じられてきたことが、少なくとも一部は証明されたというのは興味深い。また、心理学者というのは、地道にさまざまなことを実験しながら、人間の認知機能や能力発揮のあり方を、少しずつ明らかにしているのだな、という感想も持った。

 この実験では出てこないけれど、上述したように、企業をはじめとする組織では、その構成員の感情のあり方だけでなく、リーダーの感情のあり方が大きな意味を持つように思える。

 「悲観は気分によるものであり、楽観は意思によるものだ」。哲学者アランがこのように述べたとされているが、松下幸之助氏をはじめ、複数の経営者が楽観の重要性を述べているのも、何らかの経験に裏打ちされた思想なのだろうと思う。

 不勉強でまだ手がついていないのだが、次は、心理学者の方々がどこかで取り組んでこられたに違いない「チームパフォーマンスへのリーダーの感情・心理状態の影響」についての実験結果を拝見し、経営学の分野に生かしていく方策を考えてみたいと夢想している。

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