多くの人や企業が参画していく余地のある面白い分野

 こう考えると、文化ビジネス、特に広い意味での日本文化のビジネス化は、もっと多くの人や企業が参画していく余地のある面白い分野なのではないかと思う。

 さて、日本文化をビジネス化する上で、なにが大事か。現段階では、3つのポイントがあるように感じている。ストーリー、ものさし、そして、ストックを動かすこと、だ。

 村上隆さんというアーチストをご存じだろう。グローバル市場で、最高級の評価を受ける数少ない日本人アーチストだ。2008年に、彼の「マイロンサムカウボーイ」という立体作品が、サザビーズのオークションで約16億円で落札されたことは、大きなニュースになった。

 彼がこれだけの評価を得られるようになった背景のひとつが、自ら作り上げた「ストーリー」だ。絵巻物から漫画、さらには自らの作品に至るまで、日本美術の大きな流れとして、平面的、2次元的であり、遠近法もあまり使わない特徴がある、と指摘。これを「スーパーフラット(SUPERFLAT)」と命名したのだ。コンセプトを作り、それをストーリー化した、と言ってもよいだろう。2000年にPARCOでSUPERFLAT展という展覧会が行われ、翌年にはそれが、ロサンゼルス、ミネアポリス、シアトルと巡回。

村上隆さんの作品が約16億円で落札された理由

 村上作品が世界的な評価を受けるようになったのは、この「過去からの日本美術の流れ(のひとつの特徴)にのっとったコンテンポラリーアート作品」というストーリー、そしてそれを目に見える形にした展覧会が、大きな役割を果たしたと言われている。海外でも通用する「ストーリー」を構築し、日本文化を世界に理解させる。これを自ら行った、かなりレアなケースだ。

 実は、同じ2008年に、別のオークションで鎌倉時代の運慶の作とされる大日如来像が落札されたが、その価格は14億円。ある専門家の方のお話では、世界的にこれほどの希少性と歴史ある作品が、現代アーチストの作品より安く売買される、というのはまったく考えられない、という。これは、村上作品が高すぎるのではなく、歴史的な作品が世界に知られておらず、値づけの「ものさし」がきちんと存在しないため、運慶が安すぎた、ということだ。

2010年、仏ヴェルサイユ宮殿で村上隆氏が作品展「MURAKAMI VERSAILLES」を開いた時に展示された作品の一つ。(写真:friday/123RF)
2010年、仏ヴェルサイユ宮殿で村上隆氏が作品展「MURAKAMI VERSAILLES」を開いた時に展示された作品の一つ。(写真:friday/123RF)

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