自由貿易のメリットには異論はないが…

 自由貿易がもたらすメリットについては、経済学者の間でもほぼ異論がないところだが、世界全体としてプラスであったとしても、メリットよりもデメリットを被ることが多い層が先進国の中間層に存在したわけだ。彼らをターゲットとした所得再配分の仕組み、ないしデメリットを上回るメリットを実感できる状態。これがないと、先進国の中での勝ち組、負け組のギャップが拡大し、従来型の政治体制を許容できないところまできてしまう、ということだろう。

 この点から、このグラフは昨今のBREXITやトランプ現象の根本原因である中間層の不満を理解する上で欠かせない分析だとも評されている。

グローバル貿易の限界か?

 一歩引いて考えると、第二次大戦後進んできたグローバル貿易の促進という流れが、ひとつの屈曲点を迎えたと言ってもよいかもしれない。興味深いことに、リーマンショック後、世界の輸出入の総額は低下し、その後もピークレベルには戻っていないという事実も存在する。

 豊かになった新興国、たとえば中国は、グローバル化の恩恵を被って、購買力を大きく伸ばした。この結果、もともとは輸出拠点であった地域が、需要の存在する地域となり、現地生産されたものが現地で消費されるようになってきている。もちろん、より人件費の安い地域への製造業のシフトは続くだろうが、超人口大国である中国がそのポジショニングを変えてきたことは重要だと思う。

 グローバル化の流れがひとつの頂点に達し、一方で先進国の政治を揺らし、他方で世界貿易の拡大傾向が鈍化している。

グラフが示唆する世界の大変動の行方

 こう見ていくと、今後中国でどのような変化が起こるのか、インドはどういうインパクトを世界の政治経済に与えることになるのか。はたまた、先進国の中間層の反乱と言ってもよい動きは、米国一極集中から多極化へとシフトする世界の国際政治と安全保障にどのような影響を与えるのか。

 このグラフが考えさせてくれる論点は、これから数年、ないし数十年を見る上で、避けて通れない本質的なものだと思う。