全6213文字

「課長に昇進だよ。でも部下はいない。仕事も今まで通りで」

 その後も政府は、「女性活躍」「女性活用」「女性が輝く社会」などなど、一見外面はいいが、いちいちカチンとくる言葉を乱用。企業は企業で、「とりあえず、今いるヤツらでいいから“頭数をそろえろ!”」と数値目標のためだけの「女性枠」をあちこちに“創設”した。

「ある日突然、一般職の女性が全員総合職に変えられた」
「ある日突然、女性だけの部署ができた」
など、インタビューした人たちの証言によれば、現場では耳を疑うような異常人事が相次いでいることもわかった。

「ある日突然上司に『おめでとう。課長に昇進だよ。でも部下はいない。仕事も今まで通りです』って言われました。これって完全に名ばかり管理職ですよね?」

 女性たちは自分たちがまるで「数字合わせのモノ」のように扱われていることを嘆き、「女はいいよな」と男性の同僚から疎まれ、突然部下になった同僚の女性との仲がぎくしゃくし、気の毒なくらいとてつもないストレスの雨にさらされていたのである。

 ところが、政府は2015年12月に事実上「2020年30%」を断念。表向きは「いやいや、断念してないよ。2020年30%の数値目標は堅持するよ!」と言いつつ、もともと「あらゆる業種」を対象にしていた数値目標を「分野」ごとの個別設定に変更。霞が関の本省で働く国家公務員の課長級の目標を7%(当時3.5%)、民間企業の目標を15%(同9.2%)に引き下げた。

 一方、女性枠への対応で少しばかり強引に女性管理職を増やした企業では、
「女性の勤労意欲が足りない」
「管理職向きの人材がいない」
「女性の仕事に対する姿勢は男性とは異なる」
など、女性側の意欲や姿勢を問題視する意見が増え、お偉いさんからは、
「“母数”が増えれば、そのうち、優秀な女性の管理職も増えてくるんじゃないのかね」
などと、まるで他人事のような、無責任な楽観論が呪文のように繰り返され……。

 挙げ句の果てに、「日本の女性活躍度は世界でビリ」だの「日本の男女間格差は先進国最大」だのといったニュースが報じられると、「なんで海外と比べるんだ。日本は日本でいいじゃないか!」という逆ギレ的な意見まで目立つようになった。

 そういった空気に釘を刺したくて、以前のコラム(男だ女はもう「114」。埋まらぬ日本の格差問題)で「ケア労働」という視点の欠落を指摘したのだが、残念ながら、最も耳を傾けてほしかった「お偉いさん」たちには私の声は全く届かなかったようで、少々絶望的な気持ちになった。数字目標の設定自体を全否定するつもりはないが、数字の先にいる「女性の生活」をきちんと見よ!――と。

 ところが、である。

 冒頭で触れたように、今、女性活用が本格的にアツくなっているのである。