(写真/PIXTA)
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 2019年の干支は「己亥(つちのとい)」。

 専門家によれば、己亥とは「ステップアップする大事な時期にもかかわらず、あふれんばかりの精力がそれを邪魔してしまう年」らしい。

 ……なるほど。やる気満々じゃなく、淡々と過ごすが勝ちということだろうか。

 確かに、絶好調のときほどちょっとした気の緩みでポカをしたり、他人を見下して信頼を壊したり、むちゃな働き方をしたりと、いろいろやらかしてしまいがちだ。

 というわけで、2019年は粛々と、自分の信念を忘れずに、きちんきちんと仕事をする所存ですので、どうかまた一年、よろしくお願い申し上げます。

 さて、2019年元日の今日は、昨年からひしひしと感じていたことを、「こうなってほしい!」という勝手な期待を込めて書くつもりだ。

 昨年の後半から、「女性活躍」をテーマにした講演やセミナーに呼んでいただく機会が増えた。数年前にも一時ピークはあったものの、「女性活用疲れ」なる空気があちこちに漂い、沈静化。それが一転、“熱”がこの数カ月で一気にものすごい勢いで広がっているのである。

 しかも、どの会場の空気も、地に足がついているというか、泥臭いというか。よそゆき用のドレスから普段着のパンツに着替えたというべきか……。主催している女性、その上司(ほぼ男性)、参加している女性(ときどき男性含む)の「マジ度」がヒシヒシと伝わってきて、やっと、本当にやっと、「女性たちにがんばってもらわないと困ると気づいた企業が、雨後の筍のように新しい芽を出し始めた!」と、個人的には解釈している。

 思い起こせば、「女性活躍」なる言葉が市民権を得る一つのきっかけとなったのは、今から6年も前の12年12月に行われた衆議院議員選挙だった。自民党が「社会のあらゆる分野で2020年までに、指導的地位に女性が占める割合を30%以上にする目標を確実に達成する」との公約を掲げたのだ。

 「2020年30%」という数値目標自体は、03年の「第3次男女共同参画基本計画」で設定されていたもの。ただ、12年時点で大きな話題になったのは、当時の自民党政調会長だった高市早苗氏と総務会長だった野田聖子氏の間で勃発した「数値目標を巡る女同士のバトル」も多少影響している(「女は景気の道具?」 管理職の数値目標に透けるブラックな“狙い”)。

 もともと仲の悪そうな二人のバトルはいわば「ショー」のようなもので、ある意味どうでもいい。私が問題視したのは、この公約が「女性活躍」という名を借りた「景気対策」であり、男社会のTime macho(長時間労働など)な働き方に女性を巻き込もうとしただけのものだということ。数値目標を掲げることが「目的」になっていたのである。

 ちなみに当時公表された内閣府の男女共同参画会議の試算では、出産を機に女性が退職する損失は産休後に復職するより大きいとされ、女性の就業希望者(約342万人)が全員就業できれば報酬総額は約7兆円に上り、それが消費に回れば実質国内総生産(GDP)は1.5%増加するとされている(男女共同参画会議基本問題・影響調査専門調査会報告書/平成24年2月)。

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