「現場一流、経営者三流」と私が言う理由

 最後に、「現場一流、経営者三流」の理由を述べておきたい。

 これは経済協力開発機構(OECD)の「国際成人力調査(Programme for the International Assessment of Adult Competencies : PIAAC)」の結果で、ご覧のとおり日本の「労働者の質」は世界トップレベルであることがわかる。

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 PIAACは「経済のグローバル化や知識基盤社会への移行」に伴い、雇用を確保し経済成長を促すために、国民のスキルを高める必要があるとの認識から行われている。読解力、数的思考力、ITを活用した問題解決能力の3分野のスキルの調査と、年齢や性別、学歴、職業などに関する背景調査を併せて実施したものだ。

 この数値は「労働者の質の高さ」と、個人的には理解している。

 さらに、「技術者の質」を日米で比較すると

・米国では自動車製造業に従事している働く人たちのうち技術者が占める割合は10.1%。一方、日本では約半分の5.4%(=日本の現場労働者の技能の高さを示している)

・技術者の質(技術者1000人当たりの生産性)を、特許数を指標に日米で比較すると、1990年代中盤以降も日本の特許数は着実に上昇を続け、米国の水準を遥かに凌駕する高さを誇っている

・技術力の高さが経済価値の創出につながっているかを、GDP10億ドル当たりの延出願数(世界各地の国で出願・審査が完了し、登録された数)で見ると、日本の特許は米国の5分の1~6分の1の経済価値しか生み出していない低さ

といった事実が明らかになっている(「日本の技術者──技術者を取り巻く環境にどの様な変化が起こり、その中で彼らはどの様に変わったのか」より)。

 つまり、日本の経営者は現場の「力」を生かし切れていない。

 「生産性を上げて人材不足を解消する」という仕事をしない経営者が、世界に誇る質を持つ労働者を「高齢化だし~、女性たちもやめちゃうし~、人材不足だから仕方がないよね~」と、長時間労働させているのだ。

 念のため繰り返すが、これは「経営者の心」の問題である。

 だからこそ、希望がまったくないわけではない。

 旧態依然とした「考え方」を変え、「長時間労働がなぜ、悪なのか?」を常に意識し、「長時間労働が生まれるロジック」をきちんと理解すれば、変わると信じている。

 2017年は、そんな変化が始まる1年になってほしい。そして、冒頭で書いた私の予想が外れる1年になってほしい。

 心の底から、そう願っている。

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