「人手不足」を作っているのは経営者である

 長時間労働の原因が「業務量の多さ」であることを否定する労働者はいないはずだ。

 ところが、これがひとたび「人手不足」という言葉に置き換わった途端、少子高齢化などの「人口構造」の問題のようなイメージになる。

 でも、違うと思いますよ。この「人手不足」を作っているのは明らかに経営者。そう。経営者の問題である。

 順を追って説明しよう。

 まずはこちらのグラフをご覧いただきたい。これは所定外労働の経験がある労働者に「残業が発生する理由」を聞いた結果だ。(「労働時間管理と効率的な働き方に関する調査」結果および「労働時間や働き方のニーズに関する調査」結果

所定労働時間を超えて働く理由
所定労働時間を超えて働く理由
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 ご覧の通りトップは「業務の繁閑が激しいから、突発的な業務が生じやすい」で58.5%。次いで、「人手不足だから(一人当たり業務量が多いから)」が続いている(38.2%)。

 で、この回答を「労働時間の長さ」との関連で分析すると、残業の多い人ほど「人手不足」や「仕事の性格や顧客の都合上、所定外でないとできない仕事があるから」と回答する比率が高まり、週実労働時間が60時間以上の労働者では、57.4%が「人手不足」を、55.2%が「業務の繁閑」 を、さらには35.4%が「仕事の性格」を挙げた。

 本来「人手不足」とは「業務量」との比較で語られる言葉だ。しかも、「業務量」や「仕事の性格」は、経営者自身の責任でコントロールすべきもの。にも関わらず、「人手不足で長時間労働が解消できない」とはいかがなものか?

 このコラムで何度も書いていることだが、長時間労働が「悪」である理由は、過労死の直接的な原因になり得るうえ、過労自殺のトリガーとなるからに他ならない。

 何度でも繰り返すが、長時間労働はそれだけで「凶器」なのだ。

 先と同じ調査で、「強い疲労感やストレスを感じたことがありますか?」と質問したところ、「ほとんど毎日・しばしばあった」人の割合が3割を超え、週実労働時間が60時間以上の人を対象に分析すると、その割合は半数を超えた。

 さらに「(自分の)現在の働き方で健康に不安を感じる(健康不安)」とした人は実に7割に達し、 4人に1人が自らの「能力を充分、発揮できていない」としたのである。なんとなくサラリと読めてしまう結果だが、ここにこそ長時間労働の真の問題が潜んでいる。

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