他者を攻撃するメカニズム

「人は、なぜ、他者を攻撃するのか?」

 この問いは、古くから、心理学者や社会学者たちの間で議論されてきた。

 その中のひとりである心理学者のJ.T.テダスキらは、「攻撃は対処行動の1つ」と捉え、

「人間は何らか恐怖を感じたり、危機的状況に遭遇したりすると、相手を攻撃したり強制的に従わせたりするなどの策を講じることで、自分の社会的地位や社会的アイデンティティーを主張する」

という社会的機能説を唱えた。

 また、同じく心理学者のアルバート・バンデューラは、

「攻撃は社会の中で学習し、身につけ、維持された社会行動である」

とし、これは社会的学習説と呼ばれている。

 自分がいつリストラされるかわからない恐怖、長時間労働、賃金カットなど、私たちを取り巻く社会は、いくつもの「危機」が存在する。

 そういったストレスの多い状況下では、誰もが、いつ、なんどき、いじめる側に回ってもおかしくない。

 また、いじめにはある種の快楽が伴うため、一度でも攻撃するとそれが癖になり、

恐怖→攻撃(いじめ)→快感→攻撃→快感

といった“魔のいじめスパイラル”に取り込まれてしまうかもしれない。

 それを見ている子どもが、攻撃を学習し、それが子どもを追いつめる。信じたくないけど、先の国立教育政策研究所の研究官の仮説を裏付ける論拠が、十分過ぎるほど存在しているのだ。

 実は国立教育政策研究所は他にも調査を継続的に行っているのだが、ここでも気になる結果が出ているので紹介する。

 いじめを目撃したときの対応(「みてみないふりをしますか?(=傍観者)」と「止めに入りますか?(=仲裁者)」)を子どもに尋ね、イギリス、オランダと日本の3カ国で比較したところ、次のような傾向が確かめられた(原典はこちら)。

(出所:国立教育政策研究所「子供を問題行動に向かわせないために~いじめに関する追跡調査と国際比較を踏まえて~」)

 ご覧の通り、日本では、年齢とともに「仲裁者」の比率が下がり続け、中学3年ではわずか20%。一方、イギリスは、年齢とともに比率は下がるものの中学1年で下げ止まり、中学3年では約45%に反転する。

 「傍観者」は、日本は年齢とともに上がり続け、中学3年では約60%に達する。一方のイギリスとオランダは、小学生から中学生に向けてやはり上昇するものの、中学2・3年において一転して低下。イギリスの中学3年生の傍観者比率は約40%だ。

 中学生以降の子どもたちの言動には「社会の影響」いや、正確には「オトナ」が与える影響が大きいと考えられており、この仮説どおり解釈すれば、日本のオトナたちはいじめをみても「みてみないふり」をし、「仲裁もしない」傾向が高いという、実に残念な結果が得られているのである。