厚労省の調査では「メンタルヘルス不調で1か月以上休職した労働者」が、「いる=51.1%」「いない=43.5」と、半数強が復帰。労働政策研究所でも「45.9%が復職」としているのだが、この数字には気をつけなければならない。

 これらはあくまでも「復職した」というだけであって、「その後の状況」は含まれていない。
 そこで労働政策研究所の「その後」を見ると次にようになった(厚労省には調査結果なし)。一番上の「(a)メンタルヘルス」の行に注目していただきたい。

【出典】労働政策研究所 平成25年(2013年)6月24日プレスリリース(こちら、PDFファイルです)

 ごらんのとおり、「休職を経て通院治療をせずに働き続けている」人は、メンタルヘルスの項目では正社員で5.2%、非正社員で1.7%しかいない。正社員の約半分は「治療しながら働き続けている」ものの、「その後退社」「休職、復職を繰り返し」などの数字を見れば、完全復帰するのがいかに難しいかがわかる。3割近くの人が結果的に退職を余儀なくされているのだ。

 結局、(少々キツい言い方をするけど)、現状では、いったん職場でメンタルを低下させてしまうと「元に戻るのはとっても難しい」。メンタル不全は「本人の性格の問題」と6割超の人が考える不寛容社会では、切り捨てられる可能性の方が高い。

 「明日は我が身かもしれない」という危機感は誰もが持っているはずなのに……。実に残念なことだ。

企業側の対策は文字通り十年一日

 そもそも企業が実施しているメンタルヘルス対策の主流は、「相談窓口」の設置と「管理職研修」であることは、もう10年以上変わっていない。

 それでもリーマンショックが起こるまでは、職場環境の改善や社員のストレス対処力を高める予防プログラムにお金をかける流れがあった。私は1次予防(不調者を出さない職場を作る)が専門なので、独自に開発したプログラムを使いたいという依頼を頻繁に受けた。

 ところが、リーマンショック後その流れは途絶え、3次予防や4次予防のニーズが急増する。復職プログラムを完備し、亡くなった人に訴えられないように対応を徹底させたりと、メンタル不全の「事後」対応に必死な企業が増えていった。

 どんなに「真の健康職場とは、ストレス対処とかメンタル不調者のケアとか、そういったことを必要としない職場」だの、「社員の健康と企業の生産性は高い相関関係がある」と実証研究を示してもダメ。

 「メンタル不調者の休職率は、2年程度のラグを伴って売上高利益率に負の影響を与える」という研究結果(「企業における従業員のメンタルヘルスの状況と企業業績」より)も出ているんですよと諭しても、「あ、そう。そうかもしれないね~」と頷くだけ。

 この図を見せても「ホントだね~。すごいね~」と驚くだけで、「よし!1人もメンタル不全者を出さないぞ!」と行動に移す経営者は稀だ。

【出典】『労働時間の経済分析~超高齢社会の働き方を展望する』 山本勲・黒田祥子著、日本経済新聞出版社、2014年 第10章「メンタルヘルスと働き方・企業業績との関係」、p.315 図10-8(1)(経済産業研究所 「労働市場制度改革」プロジェクトの研究成果)※リンク先はPDFファイルです