パイロット不足の中で問題が深刻化する恐れ

 言うまでもなく、世界中でパイロット不足は深刻である。

 いわゆる「2030年問題」。最近では、「そんな悠長なことは言ってられん!」と、10年前倒しした「2020年問題」という呼び名も一部で使われ始めた。

 国際民間航空機関(ICAO)によれば、2010年段階でのパイロット数は全世界で46万人だったにもかかわらず、30年にはおよそ2倍の98万人が必要になると予測されている。とりわけアジア太平洋地域は深刻で、パイロット需要は10年比で4.5 倍増と試算されている。LCCの台頭、経済発展に伴う航空需要の伸び、飛行機の小型化・多頻度化などがその背景だ。

 思い起こせば、昨年11月にはAIRDO(エア・ドゥ)が、新千歳─羽田間と新千歳─仙台間で計34便(17往復)を運休。ピーチ・アビエーション、バニラエアが「パイロットが足りない」「パイロットが病欠」等の理由で、運航を取りやめていたこともわかった。欧州ではLCC最大手のライアンエアが11月から来年3月までで、計1万8000便を運休することを決めるなど、世界中の航空会社、とりわけLCCでパイロットが確保できていない現状が明るみに出た。

「まったく足りてないのに会社は次々と飛行機買うんだもん。ほんと、どうしろって言うんだろうね。パイロットの争奪戦のおかげで、LCCでも賃金はだいぶ上がっているけど……」
と話してくれた関係者もいた。

 路線の拡大と生産性の向上を目的に、燃費効率のいい航空機を大量に購入し、便数を増やす。月間乗務時間を延長し、渡航先の宿泊数を削減。ミニマムクルー(最少乗員数)の基準も変え、インターバル(休憩)をなくし、夏休みを廃止するetc etc……。「国内線を飛ぶ、エアバスや737の乗務員は、便の多さ、長時間勤務、運航宿泊の多さが問題。一方、国際線が中心の787や777は、乗務時間の長さ、時差、徹夜勤務が問題です」(関係者談)。

 16年に日本乗員組合と大原記念労働科学研究所が行なった調査では、次のような興味深い結果が得られている。

・機長の98.3%、副操縦士の97.1%が、「昼間と夜間・深夜の時間帯で、勤務による疲労が違う」と感じている。
・勤務時間帯による疲労の違いの原因としては、「乗務前に眠れず、疲労を持ち越したまま乗務せざるをえないこと」「夜間は乗務環境が日中と違うため緊張を強いられる」といった声が挙がっている。
・機長と副操縦士で別々に分析すると、副操縦士は「乗務前から疲労」している傾向が見られる。年齢が若く、身体的体力の回復も早い副操縦士が乗務前から疲労する理由としては、副操縦士は機長より年齢が若いため、家族がいる場合、子供の年齢が低いことが影響している可能性が考えられる。
・「深夜時刻帯のフライトがスケジュールに含まれている場合、事前に分かっていれば、昼間のフライトと同じように体調の管理ができるか」という問いに対しては、機長の82.9%、副操縦士の69.5%が「できない」と回答。フライトの多さ、時差調整、早朝・深夜勤務、年齢的なものなどが阻害要因として考えられると指摘されている。

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