航空会社任せの「性善説」ルール

 そもそも日本では現在、航空法に基づき、乗務前8時間以内の飲酒を禁じているものの、アルコール検知器の使用は義務ではなく、検査基準なども会社任せ。それはある意味、「会社側のモラルを信頼した」運用になっていたと捉えることができる。

 欧米でアルコール乗務が問題化していた10年ほど前、ANAでは国内のメインとなる空港にストローに息を吹き込むタイプの「精密型」アルコール検知器を設置し、乗員への啓蒙活動を行なった。その結果、基準値をオーバーする例は激減したため、現在設置されているのは羽田空港のみとなった。

 JALは国内ではストロータイプ「精密型」の検知器を採用しているが、海外で使っているのは「簡易型」だ。さらに、朝日新聞が国内の航空会社25社を調査したところ、8社が検査を義務付けておらず、検査を実施している17社のうち12社は精度の低い「簡易型」を主に使用していることがわかっている(参照記事はこちら)。

 しかも、私が関係者に確認したところ、
「精密型の検知器のある空港では、意外と、散発的にひっかかる人がいて。交代とかで対応できていたけど、今回は検査ではなく、バスの運転手の通報によるものだったので、たまたまクローズアップされた感がある」
とのこと。

 乗客の人命を第一に考えるなら、会社側はこんなに大きな事件になる前に何らかの手立てを講じられたはずだ。

 JALは報告書で副操縦士について、
・普段から飲酒量が多いという情報があった。
・体調面(腰痛)の問題も抱えており、出社後に乗務をキャンセルしたことがあった。
・過度なストレス環境下にあった可能性があり、組織が個人に何らかの対応を実施していれば、過度の飲酒を抑制できた可能性がある。
との要因分析を行っている。

 とどのつまり、事件は起こるべくして起きたもので、「個人のモラル」の問題ではあるものの、「個人のモラルだけ」の問題ではない――と言えるのだ。

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