だって、人は変わるのをもっとも苦手とする動物で。

 いったん「これだ!」と確信すると、その「確信を支持する情報」を探し、受け入れる一方で、「確信に反する情報」は目に入らない。

 この心の動きは、確証バイアスと呼ばれ、心理学者のピーター・ウェイソンによって名付けられた。

 確証バイアスの存在を証明した有名な実験のひとつが、1979年に行われた「死刑制度の論文検証」実験である。(Lord, C.et al.. Biased assimilation and attitude polarization: The effects of prior theories on subsequently considered evidence)
 アメリカでは、当時、死刑制度の賛否が社会問題となっていたのだが、議論は平行線をたどり一向に進まなかった。

 そこで、実験では「死刑制度に反対か賛成かの確固たる意見」をもった人を被験者に選択。

 そして、まず最初に被験者に「あなたは死刑制度は、犯罪を減らす効果があると考えているか?」と改めて聞き、「イエス・ノー」を答えてもらうことからスタートした(予想どおり半分がイエスだった)。

 自らの考えを表明したのち、被験者は「死刑制度は犯罪を減らす効果がある」と結論付けた研究レポートを読み、研究が「信頼できるか否か」、判断を下すよう求められた。

 その後「死刑制度は犯罪を減らす効果はない」と結論づけた研究レポートを渡され、再び読むように指示される。
 が、実はここにはトリックがあった。

 なんと、2つ目の研究レポートの中身は、最初に渡されたレポートと全く同じもので、結論だけが書き換えられていたのだ(もちろん被験者には知らされていない)。

 普通に考えれば、読み進めるうちに被験者は「このレポートの結論はおかしい」と矛盾に気付くはずだ。なんせ、最初に熟読してもらったレポートと全く同じなのだ。

新しい常識は「それもアリ」から生まれる

 ところが、である。
 被験者たちは全く異なる反応を示す。

 2つのレポートが「同じ内容」であることに全く気付かないばかりか、「自分の意見(犯罪に効果があるかないか)」を支持する研究を「これは質の高い優れた研究だ」と評価し、もう一方を「内容的にお粗末な研究」との見解を示したのである。

 これが「確証バイアス」。不思議な心の一端である。
 人が何を見て、どう判断するかは「心の目」によるものが大きい。
 心の目は、ときに「偏見」と化し、ときに「真実」を曇らせる。

 前例を壊すことの難しさ、人が変わることの難しさを、この実験は証明したのだ。

 野村総研によれば、少なくとも31.1万人の児童の保護者が「すぐにでも保育サービスを利用したいのに利用できていない」とし(2016年度)、2020年に政府目標である「25歳~44歳の女性就業率77%」を達成するには、追加で88.6万人の児童を保育する受け皿が必要となると試算している(出典はこちら)。

 え? それでもやっぱり赤ちゃんは泣くから、大人の仕事の場に同伴すべきじゃない?
 赤ちゃんにとって泣くのも仕事。“彼ら”の仕事を五感で味わえば、見えなかった真実が見えてくると思いますよ。

 だいたい「仕事に行かねばならない、でも家に置いていけない」から「連れてきただけ」のこと。それ以上でもそれ以下でもない。新しい常識を生むのは「排除」じゃなく「寛容性」だ。

 はい、ご批判のある方はどうぞ! 
 私には見えてないものを教えてくださいませ! 是非!

『他人をバカにしたがる男たち』
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 特に〈女をバカにする男たち〉の章は本書の白眉ではないか。「組織内で女性が活躍できないのは、男性がエンビー型嫉妬に囚われているから」と説く。これは男対女に限ったことではない。社内いじめ、ヘイトスピーチ、格差社会や貧困問題なども、多くの人がエンビー型嫉妬のワナに落ちてるからではないかと考え込んでしまった。

 気軽に読めるが、学術書並みに深い内容を秘めている。

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■変更履歴
記事掲載当初、「死刑制度」とすべきところが一箇所「試験制度」となっておりました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです [2017/11/28 13:00]