
なぜ、こんなにも“温度”が下がってしまったのか。
慣れっこになった? 仕方がないとあきらめた?
あるいは「自分には関係ない」と思っているのか。
数年前には連日連夜大々的に取り上げられた“介護施設での事件”が、今回はテレビではあっさりと、紙面では三面で小さく報じられている。
はい、そうです。今年の8月に東京都中野区の有料老人ホームで、入所者の男性(83歳)を殺害したとして元職員の男(25歳)が逮捕された事件です。
「介護に対する自信がなくなった」として9月に依願退職していた元職員の男は、8月22日の早朝、ホーム内の浴室で入所者の男性を浴槽に投げ入れてお湯を張り、沈めて殺害。男性の死因は溺死で、首を絞められた形跡もあった。
「布団を何回も汚され、いい加減にしろと思ってやった。ベッドで一度首を絞めた。その後、浴室も汚したので風呂に沈めた」――。
男はこう容疑を認め、「大変なことをしてしまった」と泣きながら当時の状況を自供。昨年6月から現場のホームに勤務していたが日常的な暴行や他の入所者の被害は確認されていない。また、殺害された男性は校長などを勤めた方で、難病で介護が必要だったが支えがあれば歩くことができた。
ホームを運営するニチイケアパレスは
「遅刻や欠勤はほとんどなく、まじめに勤務していた。メンタルヘルスのチェックもしていたが、ひっかかることは一切なかった。当時の勤務体制は国の基準を満たしている」
と説明。
また、厚労省は介護施設の職員による高齢者への虐待が年々増加していることから(※)、自治体に再発防止策をとるように通知。施設長を対象に研修を実施し、「職員のストレス対策」として対人関係スキルの向上や感情コントロールスキルの習得などの教育を求めている。
※厚労省の調査で介護施設での虐待は06年の54件から9年連続増加し、15年度は408件、被害者は778人だった(こちら※PDFファイルです)。
これで「基準を満たしている」なら、基準が間違ってるのでは
さて、……なんと言ったらいいのだろう。気の利いたコメントが思いつかない。
ただ、介護施設での事件を「個人の問題」にしていては悲惨な事件があとを絶たないことは明白である。
つまり、「国の基準を満たしている」とか、「職員のストレス対策を厚労省は指示している」とか、「体制に問題はありません!」とするのではなく「介護現場の問題」として改善策を講じる必要があることが、もはや確実になった、ってこと。
これまでも介護現場の問題点を指摘してきたが、改めて「終の住処の“今”」のデータや証言をもとに、私たちの未来を考えてみようと思う。
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