自殺は、社会的に強いられる死だ。
 高齢化が進む多くの先進国で「75歳以上の男性」の自殺が増加しているのに、いったいなぜ日本では40代~50代男性の自殺者が多いのか。
 なぜ、先進国である日本の中高年が、いまだ経済状態の悪い途上国と同じなのか。
 なぜ、家族が寝静まった時間に「縊死」という、より確実な方法で死を選択してしまうのか。

 月曜の明け方に男性を追い詰める「正体」が不気味で仕方がないのである。

「過労死白書」にみる中高年の苦悩

 奇しくも先の調査結果が報道された数日後、厚労省の「過労死等防止対策白書」(2018年度版)が発表され、そこにも「中高年の苦悩」が報告されていた。

 白書によれば、自殺者数総数に対する、勤務問題を原因・動機の1つとする自殺者の割合は増加傾 向にあり、17年は 9.3%(07年は6.7%)。年齢層別にみると、もっとも多いのが 「40~49 歳」で全体の28.3 %、次いで「50~59 歳」(21.7%)、「30~39 歳」(21.1%)、「20~29 歳」(20.2%)と、仕事に悩む中高年の姿が浮き彫りになっていたのだ。

 しかも、2008年以降を年次推移で見ると、

  • 「40~49歳」・・・25.1%→28.3%
  • 「50~59歳」・・・20.8% →21.7%
  • 「30~39歳」・・・26.3%→21.1%

と、40歳以上で「勤務問題」が原因・動機とする割合が増加しているのである。

 もちろんここでの「動機」は遺書などが残された場合に限っているので、全体を把握しているわけではない。と同時に、上記のパーセンテージはあくまでも総数から割合を算出した数字で、統計的に有意に「増加している」と言い切れるものでもない。

 が、「肌で感じる感覚と合う」といいますか。40代後半~50代の男性会社員たちの中で、「漠然とした不安を抱いている人がこの数年で増えた」と、フィールドワークのインタビューで感じていたので、深刻に受け止めるべき数字だと考えている。

 ただし、その「対象と不安」は2つに分けて考えねばならない。

 一つは、90年代後半から00年代前半に就職活動を行った「就職氷河期世代」で、非正規雇用を余儀なくされた人たちの不安だ。
 彼らは賃金も処遇も改善されないまま40代後半に突入し、不安定な雇用形態で結婚もできず、親の介護との両立を強いられるなど、バブル経済崩壊後の経済不安の犠牲となり続けていている気の毒な世代である。

 同じ非正規でも20代、30代の正社員化が進んでいるけど、40歳以上は別。というか、派遣法の改正で今までより厳しい状況に追いやられた人も少なくない。

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