手引きで紹介されているのはここまでだが、エヴァンス博士らは97年に、上記の反証の妥当性を検証する実証実験も行なっている。

 「拘束に関する教育を行った群(教育群)」「教育に加え相談に対応した群(教育+相談群)」「コントロール群(何も行わない群)」を無作為に割り付け、比較を行ったのだ。

拘束は病院や施設の問題でなく、みんなの問題

 その結果、拘束率は、「コントロール群」では40%台で変化がなかったのに対し、「教育+相談群」は32%から14%に低下。さらに、 介入後の転倒率は、「コントロール群」でむしろ高く、重大事故は「教育+相談群」では生じなかった。

 「老人は転倒しやすく転倒すると大きな怪我になってしまうので拘束すべき」という一般的な理解が、神話に過ぎなかったことが実証されたのである。

 繰り返すが、私は「見守りが必要ない」と言っているわけではない。しかしながら、問題の解決には、それに関わるすべての人たちが、物事の本質を理解し、知識を共有し、健康へのリテラシーを高めることは極めて重要である。

 そして、そういった知見と教育が、医療現場だけでなく全国民に「これでもか!」というくらいなされる社会になれば、もう少しだけ看護や介護の現場に人間的なぬくもりが灯るのではないか。

 事故はいかなる場合も起こるし、転倒事故は高齢者や施設だけに限ったことではないというコンセンサスを社会が受け入れられるようになれば、認知症の高齢者が地域で普通に暮らせる社会にも通じるように思う。

 誰にだって親がいるし、誰だって老いる。高齢者の腕や身体は想像以上に小さく、薄く、弱く、高齢者の息遣いは想像以上に、切ない……。

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