改めて言うまでもなく、日本の高齢化は世界で最も急ピッチで進んでいる。

 65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症で(2012年)、25年には約5人に1人になるとの推計もある(「平成29年版高齢社会白書」)。

 しかしながら、その対策は遅く「日本の認知症対策は後進国」と指摘する専門家は多い。

 例えば、日本で認知症対策が国家戦略として明確に位置づけられたのは、15年の「新オレンジプラン」だが、フランスの「プラン・アルツハイマー」や米国の「国家アルツハイマープロジェクト法」は、日本の10年以上前に進められている。

 ……というかそれ以前に、「新オレンジプラン」って何?、ってことだが、これは“病院ではなく、住み慣れた家や地域で暮らし続けることができる社会”を目標としたもので、「新」とつけているのは、「安倍首相」マターだからだ。

 つまり、12年に全く同じ内容の「オレンジプラン(認知症施策推進5カ年計画)」が打ち出され、13~17年度の5カ年計画で進められていた。

 ところが、14年11月に東京で認知症の国際会議が開かれ、安倍首相は「初めての国家戦略として認知症施策をつくる」と宣言。そこで急きょ、「オレンジ」は「新オレンジ」に、「5カ年計画」は「総合戦略」に変更されたのだ。

 と少々脱線してしまったが、日本が認知症対策の後進国と呼ばれる所以のひとつに、「身体拘束」も含まれているのである。

 ここに一冊の手引きがある。
 タイトルは「身体拘束ゼロへの手引き〜高齢者ケアにかかわるすべての人に〜」というもので、厚生労働省の「身体拘束ゼロ作戦推進会議」が、01年3月に作成した。00年4月の介護保険法施行実施前年に、当時の厚生省より介護保険施設における「身体拘束 の禁止」の省令が出されたことに付随するものだ。

 内容は若干、精神論のような部分もあるが、推進会議のメンバーの熱い思いが伝わる温かい手引きとなっている。ただ、残念なのは「関係者は医療関係者のみ」という視点で書かれている点だ。つまり、「現場だけ」に押し付ける内容で、「これじゃあ、ゼロにはならん。むしろ増えるだけ」というのが、率直な感想である。

 そこで、手引きの中で「ここだよこれ! これを全国民に徹底的に教育せよ!」という、極めて重要な部分があるので紹介する。

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