「アンハッピーな集団は、無意識の動きの“揺らぎ”が少ない」

河合:ケラケラ笑うとか、一緒に作業をするとか、そういったことですか?

矢野:いいえ、違います。意識的にコントロールできないような無意識的な動きですから。

 先ほどお話ししたように、ハッピーな人には、無意識の動きに長さの“ばらつき”があります。長く続く動きと短い時間で終わる動きがミックスしていて多様なんです。で、幸せな集団は、そうした揺らぎの大きい人が多い。連動しているんです。一方、アンハッピーな集団は、同じような長さの動きが中心で揺らぎが少ない。

河合:ほほぅ。

矢野:しかも、幸せな集団の揺らぎはきれいで、テールがきれいに伸びるベキ分布になるんです。ところが幸せじゃない集団は、テールがきれいに伸びなくて、ストンと崖みたいに切れちゃう。

河合:ストンと、ですか?

矢野:はい。揺らぎが大きいほど、揺らぎは長く持続しやすいんです。アンハッピーな集団は揺らぎが小さくて、かつブツ切れになりやすい。だから、テールがすとんと切れる。

集団における身体運動継続時間と「ハピネス度」(日立ホームページより)
集団における身体運動継続時間と「ハピネス度」(日立ホームページより)

河合:なるほど。

矢野:あと、無意識の動きの揺らぎというのは、人間だけではなくマウスやハエにも出ることが他の研究者の実験でわかっているんです。

河合:幸せなマウスやハエ? ですか??

矢野:逆です。マウスの遺伝子をノックアウトして、ある種のうつ状態のようなマウスを作ります。すると周りとの関係性で生まれる、きれいな揺らぎが認められなくなる。そこで我々の仮説は、この体の動きの無意識的な揺らぎ、1日のある程度の期間の中の揺らぎというのは、極めてそういう生物由来の非常に健全な生物としての機能を発揮していると考えています。

河合:ああ、揺らぎが何となくわかってきました。気分が落ち込むと人と会いたくなくなったり、自分の殻に籠るようになる。すると周りの動きと連動しておこる、無意識の動きの揺らぎというのがなくなるってことですね。

矢野:そうです。そうです。

河合:うつ病になると、顔の表情なども動きがなくなるとされています。本当に誰かと対面しているときだけ動く。動きの余裕がなくなるというか。

 ただ、世の中の人たちは、うつ病の人というのは、憂鬱な表情で、口数も少なく、うなだれていると考えがちですけど、ちょっと違うんですよ。かなり重症なうつ状態にならない限り、日常、極めて普通にこなしているんです。しんどいのに耐えながらも、相手に悟られないように、にこやかに笑顔を浮かべて話したりしているんですね。

矢野:それって、無意識の動きには出ていますよ。動きの量だけで見ると、相当何かが起きないところまではあんまり見えないと思うんですね。ただ、揺らぎの方を見ていると、シグナルがいろいろなところに出ているんです。

 しかも、その本人だけじゃなくて、周りにも出ているんですね。よりインタラクションしているところにも。我々って他の人たちの体の動きに、無意識下でものすごく影響されているんですね。

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