今から4年前、大手予備校「代々木ゼミナール」が、全国27校のうち20校の閉鎖を決定し、大きな話題となった。

 その背景にあるのが、少子化に加え、学生の現役志向。推薦やAO入試など現役生に有利な選考方法が増えたのに加え、景気の悪化や若者の地元志向で、現役で入れる地元の国公立に行く方が親孝行という価値観が増大したことによる。

浪人がマイノリティーに

 浪人生の減少は数字でみると、かなり衝撃的である。

 アラフィフのバブル世代が学生だった1985年には、2.5人に1人が浪人生だった。

 ところが、18歳人口がピークに達した1992年度の浪人率は約34.9%で、3人に1人。  2000年は5人に1人、14年には8人に1人まで激減している(参考記事はこちら)。

 17年度は、地方の大学へ学生を誘導しようと文部科学省が進めている政策の結果、首都圏や関西の大規模私立大が入学定員を絞り込み、浪人生が増えたとの報道もある。

 それでも30年前と比べると、浪人生はマイノリティー。
 昔以上に「みんなと一緒」がベストで、「みんなより遅れる」=「みんなより劣る」という価値観が浸透し、「失敗=悪」と考える人が増えている今、浪人生の心情を考えただけでも息苦しくなる。

 おそらくそれはオトナの私たちの想像よりはるかに大きく、実際、予備校などでは、浪人、特に2浪以上の若者を「自殺リスクの高い集団」と位置付け、対策をとることが多い。

 つまり、そんな苦しい状況を乗り越え、受験の席までたどり着いた2浪生の「生きる力」は相当に高いと思われる。

 「もう絶対に失敗はできない」というプレッシャー、失敗した時の不安、失敗した後に待ち受ける周りのまなざし……、無力感や悲壮感といった自尊心の低下など、とてつもないストレスへの対処に成功した若者なのだ。

 生きる力とは、このコラムで何回も取り上げているSOC(Sense Of Coherence)。「どんな状況の中でも、半歩でも、4分の1歩でもいいから、前に進もうとする内的な力」だ。

 SOCとは、“不安”の反対側に位置する力で、具体的に不安の原因を考え、ひとつひとつ対処し、対処に成功することで高まっていく。

 ときには逃げるが勝ちということもあるし、先延ばしにすることもある。自分ひとりきりでがんばるのではなく、他人の力もうまく使う。

 「自分1人でできることには限界がある」と素直に認め、先輩や先生に教えを請うたり、心細ければ友人と共に過ごしてもらうなど、徹底的に不安を打ち消すための作業に励み、一方で自分の軸足をしっかり見据え、最後は「これだけやったんだから、大丈夫だ。自分にはできる」と信じて本番に臨む。

 ストレスの雨に耐えられた彼らは、「人生は決して自分の思い通りにはならないけれど、自分で納得するものにはできること」を学んでいくのだ。

 つまり、「(現役・1浪は)活力があるとか、アクティブに動ける可能性が高い」かもしれないけど、「(2浪は)自分の足でふんばる力とか、周りといい関係を構築する可能性が高い」。

 そもそも試験は力ある人が合格するのではなく、試験を受けるのがうまい人が合格するものだ。

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