河合:うわー(笑)。今、それをできる若い人たちは滅多にいないし、40代に至っては、そんなことやったら即追い出し部屋の候補リストに入りそうで、ビビってできないですよね。

宮内:ありがたいことに全員出向社員でしょう。誰も指揮権がないんですよ。僕に対する人事権は誰も持っていませんでした(笑)。

河合:それは大きいです。やりたい放題。恐いものなしですね。とはいえ、ご著書の中で、そのときのトップだった乾さんは常に「社員は全員、立派な社会人だと思っている」とおっしゃっていたと書かれていますよね。私、その言葉にものすごく感動してしまったんです。この一言の中には、いろいろな意味が込められているなって。

宮内:ええ。乾さんという方は実に素晴らしい方で、オリエント・リースが成功したのも乾さんがトップだったからです。僕は乾さんの言葉を聞く度に「おかしなことはできない」と思いましたし、より真剣に仕事に取り組むようになりました。

河合:乾さんは、宮内さんが先生役でやっているときに、壁になることはなかったんですか?

宮内:乾さんは、当時、三和銀行の取締役・ニューヨーク支店長でした。そしていきなりこの小さな会社の副社長になるという辞令がでて、日本に戻ってくるまでの間に、ニューヨークでリース業を一生懸命勉強してこられたのです。

 乾さんが帰国され、一番最後に会社に合流された際に「私たちがこれからやるリース業はこういうものだ」と話をなさったわけです。

河合:はい。

宮内:それが、どう伺ってもレンタル業の話だったんです。黙って聞いていたらいいのに、僕は「私たちがやることはそれと違います」と言っちゃいました(笑)。

河合:うわぁわわああああ~~~。そ、それ、会社でいちばん偉い人を、いちばんのぺーぺーが木っ端みじんにしちゃったってことですよね。

宮内:はい。あの方は銀行出身ですから、「若い部下にそんなことを言われたのは生まれて初めてだ」と後々、笑いながらよくおっしゃっていました(笑)。

河合:(笑)。

どんな性格の人でも「大切にする」と伝える

宮内:こっちは若いし、使命感みたいなものを持っているし、別の機会に話せばよいものを、目の色を変えて言ったんでしょうね。「それは違います!」と(笑)。

河合:乾さんはそれでも「立派な社会人」として宮内さんに敬意を示してくださったんですね、きっと。

宮内:心中ではきっと、「えらいヤツがいるもんだなあ」とぼやかれたと思いますよ。当時、乾さんは50代。僕とは25歳の年齢差がありましたから。生意気なことばかり言っていました。それでも、きちんと部下として育てて下さった。相手がどんな性格の社員であれ、正しい行いをしているのであれば、人として重んじて大切にする。これは、経営の本質なんですよね。

河合:「あなたは大切な人です」というメッセージを会社が送ることが、そこで働く人のたくましさを引き出し、生産性を高めますよね。私、実は拙著の中で、このことを書いていたんです。それで宮内さんのご著書を拝見したら、全く同じことが書いてあって、驚いたというか、うれしいというか…メチャクチャうれしかったです。

宮内:企業は、まず人を中心に考えないといけないし、社員一人ひとりが「この会社で大切にされている」と感じる何かを、経営者が発信しなくてはいけません。

河合:ということは、3カ月で退散する予定だった会社に、宮内さんが居座って社長にまでなってしまったのは、やはり乾さんとの出会いが大きかったということでしょうか。